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マラソン熱が高い韓国で意外にも注目され絶賛される、猫ひろしのリオ五輪挑戦

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
カンボジア代表として男子マラソンを走る猫ひろし(写真:ロイター/アフロ)

陸上競技の花形であり、オリンピックのフィナーレを飾る男子マラソン。日本同様にお隣・韓国でもマラソンへの関心は高い。

というのも現在、韓国のマラソン人口は400万人を超えるとされており、小規模から大規模なものまで含めると年間400回以上のマラソン大会が全国各地で行なわれていると言われている。

以前、ソウルで行われたプーマ主催のマラソン大会には1万人以上の市民ランナーに交じって、韓国の“マッスル・ブーム”の火付け役である“奇跡のDカップ美ボディ女神“ユ・スンオクも走って話題にもなった。

こうした韓国のマラソン熱の始まりは、1992年バルセロナ五輪で金メダルに輝いたファン・ヨンジョ、1996年アトランタ五輪で銀メダルを手にしたイ・ボンジュなどの登場によって火がついたとされている。

かつて韓国ではマラソンと言うと「人生の縮図」「人間勝利の劇的ドラマ」というイメージが強く中高年に人気だったが、最近は昨今の“フィットネス・ブーム”もあって20~30代のランナーも多く、イェ・ジョンファなどフィットネス・タレントや、アイドルたちもハーフマラソンなどにエントリーするほどの盛り上がりを見せている。

(参考記事:“美しすぎるフィットネス・タレント”たちが韓国で大人気のワケ

ただ、そういったマラソン熱がオリンピックの成績には反映されていない。前出したファン・ヨンジョやイ・ボンジュ引退以降、韓国は世界的なランナーを輩出できていないというのが実情だ。

今大会にはソン・ミョンジュンとシム・ジョンソプが出場するが、ソン・ミョンジョンが今年2月の大分別府マラソンで記録したタイムは2時間12分台。世界レベルとの開きは大きい。1992年バルセロナ五輪で森下広一と“モンジェイックの丘の死闘”を展開したファン・ヨンジョも言っている。

「2時間12分台はマラソンを始めたばかりの選手が出す記録。今のままでは20年後も韓国が金メダルを取るのは難しい」

そんな中で韓国メディアからにわかに注目を集めている選手がいる。カンボジア代表として男子マラソンに出場する猫ひろしだ。韓国の国営放送KBSでも取り上げられたほどなのだから、意外と言えるだろう。

(参考記事:「日本の芸人の“無限挑戦”だ!!」猫ひろしのリオ五輪マラソン挑戦を韓国国営放送も絶賛するワケ

カンボジアに帰化してオリンピックの舞台に立つ猫ひろし。今回のリオ五輪には韓国でも卓球女子に中国からの帰化選手がいるのだが、同じ帰化でも猫ひろしにはかなり好意的だ。

中国から帰化した選手には否定的な意見もあるようなのだが、猫ひろしに関してはその努力の過程を詳しくクローズアップし、「ギャクじゃない」「かっこいい」「スポーツ精神が国籍を超えた」と絶賛されているほどなのだ。

(参考記事:韓国にもいた中国卓球帰化選手!! けなされ野次られ褒められるチョン・ジヒの正体

前出した通り、韓国ではマラソンが「人生の縮図」「人間勝利の劇的ドラマ」として描かれるが、まさに猫ひろしの努力と挑戦は「人間勝利の劇的ドラマ」として韓国でも好意的に受け止められているのだろう。

日本やカンボジアはもちろん、韓国でもすっかり有名になった猫ひろし。リオ五輪のあとは芸人ランナーとして韓国進出することも、悪くはないかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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