Yahoo!ニュース

女王イ・ボミがプレーオフに滅法強い理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
早くも今季初勝利を挙げたイ・ボミ。写真は2011年のもの。(写真:アフロスポーツ)

日本女子ゴルフツアー2戦目となる『ヨコハマタイヤ・レディース』を制し、早くも今季勝利を挙げた昨季賞金女王のイ・ボミ。その結果は「イ・ボミ 日本で初のスンジョンボ(勝戦譜=勝利についての記録、勝利の知らせという意味)」(経済ニュースメディア『アジア経済』)、「イ・ボミ、快速で日本V疾走、2大会目にして優勝装着」(スポーツ新聞『イルガン・スポーツ』)「日本賞金王イ・ボミ、シーズン初勝利を申告」(ネットメディア『ノーカットニュース』)など、韓国でも各メディアで報じられる。

中には最終日まで優勝を争った同じ韓国人プロのキム・ハヌルとセットにした「イ・ボミ、キム・ハヌルを退けて優勝」(一般紙『中央日報』)との記事や「イ・ボミ、ウナギを食べてうまく打てました!!」(ネットメディア『イートゥデイ』)と日本報道が報じたインタビュー記事を紹介する記事も出た。

韓国でも関心が高い証拠と言えるが、それにしても改めて舌を巻いてしまうのは、イ・ボミの勝負強さだ。「イ・ボミの逆転ドラマ、日本ツアーシーズン初勝利」(経済紙『韓国経済』)と韓国メディアも報じているが、今回はプレーオフを制しての優勝だ。イ・ボミは日本で通算16勝を挙げているが、今回の優勝を含めてそのうち7回がプレーオフを制しての優勝なのだ。

なぜイ・ボミはプレーオフに強いのか。実は一度、本人に直接聞いたことがある。アイアン上達アドバイスと強いメンタルの秘訣を聞く過程でプレーオフの話題になったことで聞けたのだが、彼女は謙遜気味にこう語っていた。

「よくプレーオフに強いと言われますが、私が勝負強いのではなく、相手が崩れているだけだと思うんです。それでもあえてプレーオフに強い理由があるとしたら、気構えでしょうか。“相手よりも私のほうが優勝を切実に望んでいる。これだけ望んでいるだから、かならずチャンスが巡ってくる。そのチャンスを逃さなければ、必ず優勝できる”。そう自分に言い聞かせています」

(参考記事:「イ・ボミのアイアン上達アドバイスと強いメンタルの秘訣~イ・ボミ特集」)

敬虔なクリスチャンであるイ・ボミは、“信じる”ことの尊さをよく知っている。つまるところイ・ボミがプレーオフに強いのは自分を信じる強さにあるのだ。

実際、彼女は韓国時代もプレーオフに強かった。何を隠そう2009年に成し遂げたプロ初勝利も、プレーオフの末に勝ち取ったものだ。それも前年度に全米女子オープンを制した同期のパク・インビをプレーオフの末に下しての優勝だった。

ちなみに韓国には、プレーオフに強い美女ゴルファーが多い。

例えば今季からアメリカ・ツアーを主戦場にするチョン・インジ。現役女子大生プロとして知られる彼女が昨年の日本女子オープンをプレーオフの末に制したのは記憶に新しいだろう。

(参考記事:「日米韓のメジャー大会を制した“若き女王”は現役女子大生だった!!」)

韓国屈指の美女ゴルファーとして知られるアン・シネは昨年、国内メジャーのKLPGAチャンピオンシップで劇的なプレーオフ勝利を成し遂げている。「引退を考えた時期もある」と告白した彼女にとっては5年ぶりの優勝が、国内メジャー、それもプレーオフというだけでドラマチックだった。

(参考記事:「韓国ゴルフ界最高の超絶セクシークイーン、アン・シネがスゴい!!」)

強くて美しく、しかもプレーオフに滅法強い韓国人ゴルファーたち。彼女たちが極限のメンタルゲームともいえるプレーオフに強いのは、その育成環境とも無関係ではないだろうが、これだけは間違いないだろう。

彼女たちの笑顔の裏には、大胆不敵で沈着冷静な勝負師の顔もある。その美しさや親しみやすさばかりに、気を取られてばかりいてはいけない。

(参考記事:「現地徹底ルポ!! 直撃取材でわかった!! 韓国ゴルフの強さと意外な真実」)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事