概説!新型コロナウイルスに関する労働問題の対処法~日本労働弁護団がQ&A発表~

コロナウイルス対策をした労働者(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染症に関連して、様々な職場での労働トラブルが頻発しています。

このテーマで、私も既に以下の2本の記事を書いています。

 新型コロナによる一斉休校/保護者が安心して休める政策を!

 新型コロナによるリストラは泣き寝入りもやむなし?~労働者が取り得る選択肢とは~

とはいえ、上記記事で取り上げたのは、あくまで様々なテーマのごく一部です。

私が所属する日本労働弁護団では、先日、網羅的な解説である、新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A(Ver.1)を公開しました。

(このQ&Aは突貫工事で仕上げたので、今後バージョンアップを予定しています)

これは、全体で50頁と詳しい内容になっています。

とはいえ、ちょっと分量が多いからさらに絞った重要箇所を教えて欲しいという方もいらっしゃると思います。そんな方のために、ここではこの日本労働弁護団作成のQ&Aをつかいながら、良くある相談類型に絞って解説していきます。さらに詳しい解説を読みたくなったら、日本労働弁護団作成のQ&Aをご確認ください。

休業などの場合、賃金はどうなるの?

【ポイント】

○ 会社が休みになった場合、基本的に100%の賃金を要求すべきです

○ 100%の賃金がもらえない場合でも、6割相当の休業手当の支払は必要です

○ 労働者としては、職場に行く意思があることを会社に示しましょう

○ 在宅勤務であることは、賃金を下げる理由にはなりません

自粛要請による休業の場合、シフト削減などにより賃金がきちんと支払われるのか?は、切実な問題です。

「自粛」という要請にしたがったのは経営判断ですから民法526条2項により100%賃金が支払われるべきケースも多いですし、少なくとも休業補償60%が支払われなければならない場面(労基法36条)です。

見落としがちなのは、使用者から休業すると伝えられたとき「自分は働きたい」という意思を示しておくことです。自分の意思で就労しなかったとされてしまうと、賃金の請求が難しくなる可能性があります。

この問題については、個別事情によって判断が分かれるケースも想定されます。納得出来る支払がなされていないのであれば、早期にご相談をお勧めします。

また、相談先としては、労働基準監督署は労基法が定める休業手当(60%)分までしか指導する権限がありませんので、ご注意を。100%の賃金支払を求めて対処するなら、労働組合や弁護士への相談が必要です。

なお、このテーマについては、日本労働弁護団の佐々木亮弁護士が詳しい記事を書いているので、こちらもご覧ください。

職場での感染予防は?

【ポイント】

〇 会社には、適切な感染予防措置をとるよう、要求しましょう

〇 マスク着用を義務付けられたら、会社が準備すべきです

連日、全国で感染が拡大する中、仕事中に新型コロナウイルスへ感染しないように、きちんと予防策をとることが重要です。

事業者は、新型コロナへの感染を防止し、また、快適な職場とするよう努める義務があり(労衛法3条1項)、労働者に対する安全配慮義務があります(労契法5条)。

職場内で、職場の実態を踏まえて感染症対策の議論を行い、使用者には、具体的に講じた対策を公表させるべきです。

とくに、衛生委員会の設置が義務付けられている事業場では、使用者に衛生委員会の開催を求めるとともに、具体的な改善策を提案してみてください。

具体的には、通勤を含む就労中の感染対策のためテレワークや時差出勤導入、消毒液の設置や職場の換気、会議など人が集まる場面の削減などが挙げられます。マスク着用が必要な職場であり、特に業務命令としてマスク着用を義務付けられた場合、これを手配するのも使用者の責務です(労働者が自費で入手した場合、使用者が費用負担すべき)。

しっかりとした予防策は、労働者はもちろん感染を防ぐことで使用者、社会全体を守ることにつながります。遠慮せず職場内で議論できることが望ましいです。

そのため、職場に労働組合がある場合には、まずは労働組合に相談して、労使交渉を通じて職場の衛生環境の改善を求めましょう。

会社から自宅待機命令をうけた場合の賃金は?

【ポイント】

〇 会社に対して、賃金の全額を補償するよう求めましょう

新型コロナウイルスは指定感染症に定められていますが、単に感染が疑われているだけの場合には、労働者に法的には就業制限を課すことはできないと考えます。

また、家族に感染者が出たとしても、労働者自身が感染したわけではない場合も同様です。

そのため、会社が、感染疑いや家族の感染を理由として、業務命令として一方的に自宅待機を命じる場合には、使用者の責めに帰すべき事由により労働者が就労できなくなるわけですから、基本的には、給料の全額が補償されます(民法536条2項)。

もっとも、感染が疑われる場合には、無理をせず、自主的に自宅待機をするようにしましょう。

この場合には、給料の補償について会社とよく話し合い、支払ってもらうよう交渉すべきです。有給の病気休暇制度等があれば利用するか、そういう制度がなくても年次有給休暇を利用することもできます。

また、4日以上休業した場合は、健康保険組合の傷病手当金の請求もできます。

解雇・雇止めなどのリストラへの対処法

【ポイント】

〇 解雇・雇止めされても、諦めなくて大丈夫!

〇 新型コロナの影響による解雇は整理解雇とされ、厳格に制限されます

〇 職場復帰をしたくない場合も解雇・雇止めに対して争う余地はあります

○ 退職(離職)を求められている場合、解雇なのか退職勧奨にすぎないのか確認しましょう

○ 退職勧奨に応じる義務はありません。きっぱりNOを!

これは、既に私も詳しい記事を、書いたのでこちらをご覧ください

労働者に責任はない使用者の経営上の理由による解雇で「整理解雇」と呼ばるケースであり、解雇の正当性が通常の解雇よりもずっと厳格に判断されます。

とはいえ、有期労働契約の場合には、契約期間満了か、契約期間途中なのかで、判断方法も大きく変わるので、専門家にご相談ください。

なお、悪質な使用者は「解雇すると不名誉だよ」等と脅かし、労働者に選択肢を与えず自発的に退職届を出させる形をとって、解雇をせず退職をさせることがあります。

解雇すると言われても、絶対に自分から退職届をだしたりしないように注意して下さい。いわゆる自己都合退職扱いとされてしまい、失業保険の受給や退職金などで不利益がある場合があります。

内定取り消しは仕方がない?

【ポイント】

○ 内定取消しは解雇と同じで、会社が自由にすることはできません

○ 政府は、新型コロナを理由とする内定取消しをしないよう、主要経済団体に「特段の配慮」を求めています

採用内定の時点で既に労働契約が成立しているため、会社は自由に内定を取り消せません。内定の取消しは、通常の解雇同様に規制があります。

政府が内定取り消しをしないように要請も出しているので、諦めないでください。

新型コロナウイルスの影響で長時間労働が続いて辛いです

【ポイント】

〇 使用者は労働者に対して安全配慮義務を負い、長時間労働を是正する義務があります。緊急時の対応だからこそ、労働者の負担への配慮が必要

〇 1日8時間・週40時間が労働時間の原則です

〇 長時間労働を是正させるためには、客観的な労働時間の把握が必要

使用者は安全配慮義務として、労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負っています(労働契約法5条、労働安全衛生法3条1項)。

とりわけ、新型コロナの対応のような緊急時の対応は、労働時間だけではなく、業務の過度な緊張感やストレスにより、労働者には重い負担が生じやすいため、数多くの労働災害(公務災害)が発生していることも忘れてはなりません。

労基法は、使用者に対して、休憩を除き労働者を1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないと定めています(労働基準法32条)。これを超えて使用者が労働者に残業を命じるには36協定を作成し、これを所轄の労基署に届け出ることが必要です。

ですが、職場によっては36協定が締結されておらず、または締結したつもりであっても法律が定める手続(例:過半数代表者の選任など)が適切に守られていない場合があります。

そういった場合、使用者は1日8時間または1週40時間を超えて労働者を残業させることはできませんので、まずは36協定が存在するのか、確認をしてみてください。

また、残業の事由は、36協定において具体的に定められている必要があります。会社において、その要件を満たしていない、あるいは定められた残業の事由に該当する事情がないということであれば、会社は労働者に対して残業を命じることはできません。

36協定を締結した場合でも、許される時間外労働の上限は、原則として月45時間、年間360時間(休日労働は含まず)に制限されています(「限度時間」と呼ばれます・労基法36条3項及び同条4項。大企業は2019年4月1日施行、中小企業は2020年4月1日施行)。

会社があなたに対し命じることができる残業は、36協定の中で定められた上限時間(しかも、定めることができる残業時間の上限は法律で決まっています。)の限度での残業にとどまります。

仮に上限内の残業であっても、安全配慮義務を尽くすため労働時間を調整する必要もありますので、是正を求めることができます。

使用者に対してそういった是正をさせるために重要なのは、まずは使用者に正確に労働時間を記録させることです。

通達で、使用者は、「タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として 確認し、適正に記録すること」が求められています。

まずは、労働時間が正確に把握されているのか(持ち帰り残業も含む)を確認して、きちんと1分単位で正確に記録をさせるように求めることが重要です。

使用者から与えられた仕事が終わらず自宅へ持ち帰ってやった業務でも、基本的には労働時間になることも覚えておき、しっかりと労働時間を記録して自衛措置をとっておいてください。在宅勤務を命じられた場合も同様です。

長時間労働の是正は、労働者が1人だけで声を挙げても実現するのは難しいでしょうし、使用者から報復的な措置をとられるリスクもあります。職場の労働組合がない場合は、専門家と連携して対処することをお勧めします。

時差出勤・テレワークなど

【ポイント】

○ 時差出勤を労働者の合意なく一方的に命じることは原則としてできません

○ 他方で、会社は、労働者の要望がある場合には、安全配慮義務として、必要な範囲で時差出勤を認めなければなりません

○ 正社員に時差出勤を認めつつ、非正規社員に認めないことは原則として許されません

これも多い相談類型です。労使の話し合いにより、双方にメリットある解決が可能な場合も多いですから、きちんと話し合える場を設置することが重要です。

テレワーク・時差出勤などを理由にした待遇切り下げなどのご相談も多いですが、労働者側が不利益を受け入れねばならないとは限らないので、まずはご相談ください。

顧客からのハラスメントは?

【ポイント】

○ 顧客等からのハラスメントに対しても、使用者は対応が必要です

○ 新型コロナの感染者が多く出ていることを理由として、国籍・出身地等による差別は許されません

問題ある顧客の対応など、いわゆる「カスタマーハラスメント」の相談も増えています。

使用者は労働者に対する安全配慮義務として、カスタマーハラスメント対策のための体制整備をする必要がある場合もあります。

たとえば、社内で対応マニュアルを作成して労働者に周知したり、労働者用の相談窓口を設けるなどの労働者に対するフォローをする体制を整えることが考えられます。

この点、2020年6月1日から大企業に対し施行される労働政策総合推進法に基づく指針「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)では、顧客等によるハラスメントについて、相談体制の確保、被害者への配慮、被害防止の取組が望ましい措置として挙げられています(同指針第7項)ので、先行してこれを活用すべきでしょう。

また、労働者の国籍やルーツ等を理由にした使用者や顧客からの差別が起きることは、断じてゆるされません

差別に対しては、使用者がこれを許さないという姿勢を明確に示すことが重要です。当事者任せにはせず、気がついた同僚はもちろん、見かけた1人1人が行動して欲しいです。

派遣で働いていますが・・・

【ポイント】

○ 有期派遣労働契約の契約期間中に解雇された場合、期間満了までの賃金を派遣元に請求できます

○ 有期派遣労働契約の契約期間満了後に更新をされなかった場合、契約更新を求めて交渉できます。派遣元に対して雇用安定措置を取ることを求めましょう

○ 有期派遣労働契約の派遣労働者は、派遣元・派遣先の労働者との不合理な待遇の是正を要求できます

派遣労働者は立場が弱く、真っ先に雇用を打ち切られる、安全対策で正社員などと差別を受けるなどの、普段よりも一層、雇用形態を理由にした差別をうけがちです。

使用者にはこういった緊急時こそ、派遣労働者の立場にたった、責任ある対応が求められます。

あまり周知されていませんが、近時の法改正により、派遣法等の改正で意外と派遣労働者保護の制度が整っています。とはいえ、強制力がないものばかりで、救済を図るため派遣労働者1人が行動するだけでは難しい場面が多いです。

早い段階で、専門家と連携して対処することをお勧めします。

公務員・フリーランスですが・・・

専門的な対処が必要です。

詳しくは、Q&Aをご覧ください。

相談先は?

〇日本労働弁護団

このQ&Aを作成した日本労働弁護団では、日常的に、全国各地で電話による無料相談を受け付けています。相談に応じるのは、労働弁護団に所属する労働者側の立場で活動する弁護士です。

ぜひ、こちらで相談先を探してみてください。

また、以下の日程で、特別に全国一斉のホットライン(無料電話相談)も実施しますので、ご活用ください。

◆実施日:2020年4月5日(日)

◆時 間:10:00~17:00(東京)

◆電話番号:03-3251-5363(東京・弁護団本部)

東京以外の開催地の情報などは、こちらをご覧ください。

〇労働組合

◆連合(全国の連合相談窓口)

 0120-154-052(お近くの連合(地方連合会)に繋がります)

◆全労連 

 0120-378-060(お近くの労働相談センターに繋がります)

◆全労協 

 0120-501-581(お近くの相談所へ繋がります)

◆地域の1人でも入れる労働組合(いわゆるユニオン)

→ コミュニティ・ユニオン全国ネットワークのホームページ等から、全国各地のお住まいの近くの地域密着のユニオン(職場に労働組合がなくても、1人でも入ることができる労働組合)を探すことができます。

 *ここに加盟しないユニオンもあります

○厚労省

 厚労省では、新型コロナウイルス感染症に関する特別労働相談窓口を全国各地の労働局内に設けています。

【注】この記事は、日本労働弁護団作成Q&Aを用いて解説をしていますが、本文中の記事内容は全て筆者個人の見解です。

2020/03/31 13:09 数箇所誤記を訂正しました