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ネット利用のゲームチェンジャー。MicrosoftとGoogleが革新的AIを検索サービスに応用

佐藤哲也株)アンド・ディ
(提供:アフロ)

ここ数日で、生成系AIと呼ばれる昨年後半から話題になっているトレンドに大きな転換点が訪れている。ここからの数回でそのトレンドについて整理していきたい。

まず、大きな衝撃をもって迎えられたのは昨年(2022年)8月にリリースされた画像生成系AIの一つである、StableDiffusionである。代表的なものはイラストや写真に描きたい内容のテキストを記述すると、それにふさわしい画像が生成されるというサービスである。インターネット上にある様々な画像の特徴を学習した結果を生かして、これまで人間が描いていたイラストを自動的に生成できるインパクトは大きい。

次に、話題になったのは2022年11月30日にOpenAIよりリリースされた対話型AIのChatGPTである。まるで人間とやり取りしているかのような自然さで、従来の応答チャットボットとは明らかに一線を画している印象だ。かんたんなプログラミングもできるし比較的常識とされる知識は概ね正しく答える。インターネット利用におけるゲームチェンジャーになることは間違いない。

最初にChatGPTを使ってみた感想の一つは、現在のWeb検索の一部を大きく代替するだろうというものだ。現在の主要な検索サービスであるGoogleやBingの検索ボックスは基本的には単語を入力して検索するスタイルが主流だが、検索者(質問者)の意図を読み取りつつ正しい答えをピンポイントで回答することができるのがChatGPTの強力な点だ。これは既存の検索事業者にとって大きな脅威になる。そんな予感を感じていた。

そのような中で、昨日Microsoftは自社の検索サービスであるBingにChatGPTに用いられた技術を搭載するというプレス向けイベントが行われた。すでにBingの新しい画面には下記のような対話応答型UIが搭載されており、自然な文章で検索をかけることができるようになっている。

Bingの新しい検索UI(筆者の環境にて撮影)
Bingの新しい検索UI(筆者の環境にて撮影)

新しいMicrosoftBingの検索UI

このような対話型のUIが今後のインターネット利用の中で大きなシェアを占めるようだと、ビジネス的にも倫理的にも大きな影響が出るだろう。また、対話応答の結果のテキストから、冒頭に紹介した画像生成につなげる利用も散見されることから、ネットの利活用が大きく変化することになる。

従来のWebサイトを見るという方法による情報提供は本や雑誌のような紙媒体がインターネット上に掲載されたような変化であり、いわば著者(または当該サーバ・ドメインの管理者)が存在する世界であった。しかし生成系AIにより回答された対話による回答は、いわばネット上のテキスト情報をAIが編集して答えていることになるため、それらの情報の正しさや倫理性をめぐる論点が議論になってくるだろう。

特に大きな影響をうけるのはネットの広告・マーケティングのあり方でないか。これまでページ上の広告スペースや検索結果画面上にリンクを掲載することより消費者・生活者の認知を獲得していたが、生成系AIの対話応答文の中にいかにして広告を入れ込むのか、またそのような行為が消費者から許容されうるのか、これらのビジネス的影響についても、様々な論点が生じる。

また、今回のBingのサービス提供に合わせて、検索の巨人たるGoogleも新サービス「Bard」を提供することを昨日アナウンスしている。Googleの新しいサービスについての概要についてはまた別稿に整理することにしたいが、MicrosoftとGoogleが提供する最新のAIはインターネットの利用シーンが大きく変化させるゲームチェンジャーになることはもはや確実で、ネット関連を各種ビジネスがどのように変貌していくのか興味は尽きない。

株)アンド・ディ

株)アンド・ディ(マーケティングリサーチ会社)代表。大学院卒業後シンクタンク勤務を経て大学教員に。主に政治・経済に関する意思決定支援システムなどを研究。日本初のVoting Assisted Applications(投票支援システム・いわゆるボートマッチ)を開発、他集合知による未来予測ツールなどを開発。現在はマーケティングリサーチにおけるAI応用システムの開発を行ってます。

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