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ウクライナ軍、めったに見られないロシア軍の監視ドローン「ZALA 421-16Е2」破壊・回収

佐藤仁学術研究員・著述家
草原に落下した「ZALA 421-16Е2」を回収(ウクライナ軍提供)

2023年11月にロシア軍の監視ドローン「ZALA 421-16Е2」が破壊された様子をおさめたレアな動画が公開されていた。2023年9月にはウクライナ兵が草原に落下していた「ZALA 421-16Е2」を拾ってくる動画が公開されていた。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ロシア軍は主にロシア製の監視ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。たまに「Eleron-3」でも偵察を行っている。「Granat-4」、「Korsar(Корсар)」「Supercam S150」というロシア製の監視ドローンもたまに見かける。またロシア軍は、ロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」、イラン政府から提供された攻撃ドローン「シャハド」で攻撃を行っている。「Orlan-10」と「シャハド」が撃破された残骸の写真は頻繁に見かけるので珍しくはない。「ZALA 421-16Е2」はそれらに比べるとあまり見かけない。

ウクライナ軍はロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」を頻繁に迎撃して破壊しているので「Orlan-10」が破壊されても動画や写真で公開されることはほとんどなくなってしまった。だが「ZALA 421-16Е2」が破壊された動画や写真は珍しいので地元ではニュースにもなることが多い。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。

「ZALA 421-16Е2」は、監視・偵察専用機で爆弾を搭載して落下させたり、標的に突っ込んで爆発したりすることは基本的にはない。そのためジャミングでも機能停止できる。

2023年9月にウクライナ兵が草原で拾っていた「ZALA 421-16Е2」は機能停止させて"ソフトキル"で迎撃したものだと思われる(もしかしたら機体故障で落下しただけかもしれない)。2023年11月に真っ黒に焼け焦げて破壊された「ZALA 421-16Е2」は地対空ミサイルなどで破壊されたものであろう。

敵軍の監視・偵察ドローンに自軍の居場所を察知されると、その場所をめがけてミサイルが大量に発射されるので監視ドローンを検知したらすぐに破壊したり機能停止させたりする必要がある。

またロシア軍は破壊された監視ドローンを回収して部品の再利用をして、監視ドローンを作っている。そのため、監視ドローンといえども、中途半端な機能停止や撃墜によって落下させるのではなく、他の戦車やミサイルと同じように上空で徹底的に破壊しておいたほうが良い。そうすれば部品を回収されて監視ドローン製造に再利用されなくてすむ。

▼ハードキルで破壊された「ZALA 421-16Е2」(2023年11月)

▼ソフトキルで破壊されたと思われる「ZALA 421-16Е2」を草原で拾うウクライナ兵(2023年9月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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