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ウクライナ軍が破壊したロシア軍のドローン、2022年2月24日から9月11日までに900機突破

佐藤仁学術研究員・著述家
徹底的に破壊されたロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」(ウクライナ軍提供)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍では2022年2月24日にロシア軍に侵攻されてから殺害したロシア軍の兵士の数、破壊した戦車、戦闘機など兵器の数をほぼ毎日公表している。

ウクライナ軍によると2022年2月24日から2022年9月11日までの約6か月半の間でロシア軍兵士の犠牲者は52,000人以上で、破壊したドローンは900機を超えた。

2022年8月20日に破壊したロシア軍のドローンが800機を突破したので、20日程度で100機のドローンを破壊している。1日平均して5機のドローンを迎撃して破壊していることになる。以前に比べると破壊しているドローンの数が増えている傾向にある。両軍とも監視・偵察ドローンや攻撃ドローンをかなりの規模で飛ばしているので、カウントされずに破壊されたドローンを含めるともっと多いだろう。

ウクライナ軍では破壊したドローンのなかで、監視・偵察ドローンと攻撃ドローンの内訳は明らかにしていない。ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。最近では「Kartograf」と呼ばれている監視ドローンも使用しており、それもウクライナ軍によって破壊されている。またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。イラン政府はロシア軍に攻撃ドローンを提供している。だが、まだウクライナ軍によって破壊された報告が発表されていない。また最近の傾向では「ZALA 421-16Е2」や「Kartograf」といった今まではあまり使われていなかった監視ドローンが撃墜されている。

ウクライナ軍では迎撃して破壊したロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」や攻撃ドローン「KUB-BLA」の残骸の写真や地対空ミサイルを発射して上空で撃破する動画を投稿して世界中にアピールしている。

破壊された装甲戦闘車両が約4600台、戦車が約2100台、大砲が約1200台なのでそれらに比べると破壊されたドローンは900機と少ない。戦車や大砲の多くも上空からドローンで爆弾を投下したり、ドローンごと突っ込んでいき破壊している。

▼ウクライナ軍による"ハードキル"で破壊されたロシア軍の珍しい監視ドローン

偵察ドローンこそ検知したらすぐに破壊へ

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破する、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。爆弾などを搭載していない小型の監視・偵察ドローンならばジャミングで機能停止させる"ソフトキル"で迎撃できるが、中型から大型の攻撃ドローンの場合は対空機関砲や重機関銃のような"ハードキル"で上空で爆破するのが効果的である。

地対空ミサイルシステムや防空ミサイルのような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆破させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくるからだ。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果的である。

▼ウクライナ軍が破壊したロシア軍が頻繁に利用している偵察ドローン「Orlan-10」

▼徹底的に破壊された偵察ドローン「Orlan-10」

▼ウクライナ軍が公表しているロシア軍の破壊状況

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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