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ウクライナ軍、英国提供の「スターストリーク」でロシアの偵察ドローン撃破:エリザベス女王にも感謝

佐藤仁学術研究員・著述家
(ウクライナ軍提供)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ロシア軍はロシア製の「KUB-BLA」で攻撃を行っており、ロシア製の監視・偵察用ドローン「Orlan-10」で主に監視を行っている。

2022年6月にはウクライナ軍は英国政府が提供した、英国製の近距離防空ミサイル「スターストリーク」でロシアの偵察ドローン「Orlan-10」を爆破した動画を公開していた。

ウクライナ政府は世界中にあらゆる兵器の早急な提供を呼びかけている。英国のジョンソン首相は2022年4月9日にウクライナのキーウを電撃訪問してゼレンスキー大統領と会談。ウクライナに対して財政・軍事面での追加支援を発表。ジョンソン首相は「ウクライナの人々は世界の新しい英雄です」と称賛していた。ゼレンスキー大統領は「イギリスの強力な支援がウクライナ軍の防衛力を強化してくれていることに感謝しています」と語っていた。

ウクライナ軍は公式ツイッターでエリザベス女王が「スターストリーク」を持っているイラストを掲載して「God bless the Queen, Ukraine and the whole world.」と英国に感謝を伝えている。

ロシアの偵察ドローン「Orlan-10」は従来は監視・偵察を目的として攻撃は行わなかったが、最近ではロシアが偵察ドローン「Orlan-10」に手榴弾を搭載して、上空から落下しているので、ウクライナ軍としても徹底して迎撃することが重要になっている。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。英国が提供した近距離防空ミサイル「スターストリーク」による偵察ドローンの撃破は明らかにハードキル。

ウクライナ紛争ではウクライナ軍がトルコの軍事ドローンでロシア軍を攻撃して侵攻を阻止していることが多く報じられているが、ロシア軍も攻撃ドローンでウクライナを攻撃したり、ドローンによる監視・偵察を行っている。またウクライナ軍のドローンをロシア軍も迎撃している。このように両軍が監視・偵察ドローンや攻撃ドローンを大量に飛ばしているので、地上から迎撃することが両軍の安全保障上、非常に重要になっている。

偵察ドローン「Orlan-10」は、ジャミングでも機能停止できるが、最近の偵察ドローンには手榴弾などの武器や弾薬が搭載されている可能性があるので、機能停止するだけで上空からドローンが落下して地上で爆発する危険もある。そのため上空で撃破しておいた方が良い。また敵軍の監視・偵察ドローンに自軍の居場所を察知されると、その場所をめがけてミサイルが大量に発射されるので偵察ドローンを検知したらすぐに破壊したり機能停止する必要がある。

また現在のロシア軍は破壊された監視ドローンを回収して部品の再利用をして、監視ドローンを作っているようだ。そのため、監視ドローンといえども、中途半端な機能停止や撃墜によって落下させるのではなく、他の戦車やミサイルと同じように上空で徹底的に破壊しておきたい。そうすれば部品を回収されて監視ドローン製造に再利用されないので効果的である。

英国からは近距離防空ミサイル「スターストリーク」だけでなく、軽量多目的ミサイル「マートレット」も提供されている。他にも、ポーランドが提供している携帯型防空システム「Piorun」などでも上空のドローンを撃破している。またアメリカはFlex Forceの「Dronebuster」とIXIの「Dronekiller」というドローン迎撃システムをウクライナ軍に提供。またリトアニアからもリトアニアで開発されたドローン迎撃システム「EDM4S」が提供されている。これらのドローン迎撃銃は電磁波による妨害で上空のドローンの機能を停止して、地上に落下させている。

▼ロシアの偵察ドローン「Orlan-10」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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