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タジキスタンでイランの軍事ドローン「Ababil-2」製造:イランの勢力拡大にイスラエルは警戒感

佐藤仁学術研究員・著述家
写真は「Ababil-3」(イラン国防兵站省提供)

初のイラン国外でのイランの軍事ドローン製造へ

イラン政府はイランの軍事ドローン「Ababil-2」をタジキスタンで製造、販売すると地元メディア、イスラーム共和国通信(IRNA)が報じていた。イランの軍事ドローンをイラン国外で製造するのは初めて。「Ababil-2」は攻撃だけでなく監視・偵察にも活用できる。

タジキスタン政府はウクライナ紛争でウクライナ軍によって多く活用されているトルコ製の軍事ドローン「バイラクタルTB2」の購入にも強い意欲を示している。

今回、イランの軍事ドローンのイラン国外での製造に警戒感を表明しているのがイランの敵国のイスラエルだ。イランはイスラエルまで飛行可能な軍事ドローンも開発しており、いつでもイスラエルを軍事ドローンで攻撃できる体制を整えている。

またイランの軍事ドローンはシリア、レバノン、イラク、イエメンにも多く提供されており、さらに中央アジアのタジキスタンにまで拡大していく。イラン政府はこれらの国々に軍事ドローンを提供するだけでなく、軍事訓練なども行って人的交流も深めている。そのような軍事訓練を通じた人的交流でイラン軍から反ユダヤ主義が各国に伝えられていく。イランによるイラン製の軍事ドローンの拡散と人的交流に伴う反ユダヤ主義の拡散はイスラエルにとって大きな脅威だ。

2022年3月にはイスラエル国防省の担当者はイランの軍事ドローンの拡散を「軍人だけでなく一般市民(非戦闘員)も標的の対象になりうる新たなグローバル・イシューの1つだ」と語ってイラン政府を批判していた。

現在ウクライナとロシアの紛争では多くの軍事ドローンが実戦で使われており、その有効性が証明されている。軍事ドローンが戦争の行方を左右する1つの要因にもなろうしている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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