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ロシア侵攻阻止に貢献のトルコの軍事ドローン「バイラクタル」2週間に12機のペースでウクライナ軍に納品

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

上空で機能停止や撃墜されやすいドローン

ロシア軍が2022年2月にウクライナに侵攻。ウクライナ軍はトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」を利用して侵攻してきたロシア軍に攻撃している。

トルコの軍事企業バイカル社製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍の装甲車を上空から破壊して侵攻を阻止したり、黒海にいたロシア海軍の巡視船2隻をスネーク島付近で爆破したり、ロシア軍の弾薬貯蔵庫やヘリコプターなどを爆破したりとウクライナ軍の防衛に大きく貢献している。

ウクライナ軍は「バイラクタルTB2」で攻撃に成功するたびに上空からの動画をSNSで公開して世界中にアピールしている。「バイラクタルTB2」はロシア軍侵攻阻止の代名詞のようになっており、歌にもなってウクライナ市民を鼓舞している。

このように「バイラクタルTB2」の攻撃が成功した時のアピールの印象が大きいので、百戦錬磨の無敵のドローンのような勘違いをしてしまいがちだが、攻撃に成功する前にロシア軍に上空で撃墜されてしまうことも多い。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲やミサイルのように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。特に監視・偵察ドローンは民生品を利用しており、飛行している時の音もうるさいのですぐに検知されて簡単に機能停止されてしまう。攻撃ドローンも所詮ドローンなので上空で撃墜されやすい。

そのため攻撃ドローンも監視・偵察ドローンも何台でも戦場では必要でウクライナ政府も各国に武器の提供を呼びかけている。そしてトルコのバイカル社からは2週間ごとに12機の「バイラクタルTB2」がウクライナ軍に納品されていると地元のメディアが多数報じていた。トルコ政府はウクライナ軍に対して「バイラクタルTB2」を提供しているのではなく、あくまでもバイカル社のビジネスというスタンスを貫いている。

ウクライナ紛争ではトルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」だけでなく、米国バイデン政権は米国エアロバイロンメント社が開発している攻撃ドローン「スイッチブレード」を提供。さらに「フェニックス・ゴースト」も提供する。英国も攻撃用の軍事ドローンをウクライナ軍に提供している。またウクライナで開発した軍事ドローン「PD-1」でもロシア軍に攻撃している。ロシア軍はロシア製の軍事ドローン「KUB-BLA」で攻撃を行っている。両国ともに軍事ドローンによる上空からの攻撃を続けている。軍事ドローンが上空から地上に突っ込んできたり、攻撃をして破壊力も甚大であることから両国にとって大きな脅威になっている。

▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」

▼「バイラクタル TB2」を称えたウクライナの歌

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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