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米国NPO 無辜の市民が標的にされるキラーロボット開発に反対

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

米国のNPOの「Ethics In Technology」が世界平和とキラーロボット開発の反対を訴えた動画を制作して2022年3月5日に公開した。「Ethics In Technology」では科学技術の発展によって開発されたプロダクトが戦争に使用されたり、環境汚染につながることを反対して世界中に訴えている。

今回の動画でもウクライナやシリア、イエメン、ソマリア、パレスチナでの紛争解決を訴えて、後半で次世代の兵器としてキラーロボットが登場することを懸念。無辜の市民を殺害しうるキラーロボットの開発と使用反対を訴えている。

ロシアによるウクライナ侵攻で無辜の市民も多く殺害されている。現在、ロシアの軍人が判断してウクライナ市民を攻撃をしている。だが、攻撃に際して人間の判断を介さないキラーロボットが開発されることによって、標的が軍人なのか市民なのかを判断できずにアルゴリズムで無差別に攻撃が行われることによって、多くの市民がキラーロボットの標的とされて犠牲になることも懸念している。

▼ A plea to end global conflicts and stop development of Killer Robots

AI(人工知能)技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。2021年12月にはスイスのジュネーブで国連の特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons: CCW)の会議が開催されて、自律型殺傷兵器について議論されていた。

AI技術の軍事への活用は積極的に行われており、アメリカ、中国、ロシア、イスラエル、トルコなどでは自律型兵器の開発が進められており、現実的な兵器となってきている。新たな技術の発展が軍事分野で利用されるのは歴史的にも常であり、そのようにして軍事技術も民生品も発展してきた。

現在、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界で30か国が自律型殺傷兵器の開発や使用に反対しているが中小国がほとんどだ。アメリカやロシアなど大国は開発も使用も反対していないため、国際社会での足並みがそろっていない。中国は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発には反対していないことから、おそらく開発は進められているのだろう。今回のCCWでも一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」となった。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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