国連事務総長「国際社会が直面している解決すべき5つの課題」でキラーロボット開発と使用禁止訴え
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は2021年1月に国連総会で、世界の全ての国が直面している解決すべき5つの緊急事態を掲げていた。新型コロナウィルスの感染拡大、国際金融問題、気候変動、テクノロジー&サイバー、平和と安全保障の5つ。
そしてテクノロジー&サイバーの中で、グテーレス事務総長は著しいテクノロジーの発展によってデジタルカオスが生じてしまい、壊滅的な力となって一般の人々にとって脅威になってきていると警告を発した。個人情報の悪用やサイバー犯罪、誤情報の拡散も例にあげていた。
またグテーレス事務総長は「メディアやジャーナリストの方々が"キラーロボット"とよく言われる」と前置きしてから「自律型殺傷兵器の開発と使用の禁止に向けて世界中の国々が取り組んでいく必要があります。そして自律型殺傷兵器の開発と使用の禁止、バイオテクノロジー、ニューロ技術に向けた新しい国際社会でのガバナンスの枠組みを検討する必要があります」と語っていた。
2021年12月にジュネーブの国連で自律型殺傷兵器の開発や使用に関する会合が開催されていた。グテーレス事務総長は以前から自律型殺傷兵器の開発と使用の禁止を訴えており、この会合でもそのとおり主張していた。
AI(人工知能)技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。
人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。ロシアやアメリカ、イスラエル、韓国などは反対していないので、積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしている。中国は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発することには反対していない。国連の安全保障理事会の常任理事5か国(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス)は自律型殺傷兵器の開発に反対していないどころか、積極的にAI技術を軍事で活用しようとしており兵器の無人化、自律化を進めている。
CCWの会合でも国際社会での一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」となった。今後、どれだけ議論を継続しても、グテーレス事務総長が毎回、反対を訴えても、5大国が自律型殺傷兵器の開発を推進しているので、全世界の国々が一致して「自律型殺傷兵器の開発と使用の禁止」を支持することはないだろう。
▼キラーロボットの脅威と開発の反対を訴える国連事務総長(2019年)