キラーロボット開発禁止も訴えていたツツ元大主教:ノーベル平和賞受賞者らとともに
南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)政策に反対し、その功績で1984年にノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ元大主教が2021年12月に90歳で亡くなられた。反アパルトヘイト運動を武装闘争ではなくハンガーストライキなど非暴力で実行していた。
ツツ元大主教はアパルトヘイトへの非暴力抵抗ばかりが目立っていたが、2014年には他のノーベル平和賞受賞者とともにキラーロボットの使用と開発の禁止を訴えた宣言にも参加していた。
AI(人工知能)技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。
人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発や使用に反対している。2014年にツツ元大主教らも、人間の判断を介さないで標的を攻撃してくることが非倫理的・非道徳的であるという理由で開発に反対する宣言を行っていた。
このように多くの著名人やNGOらがキラーロボットの開発や使用禁止を訴えているが、AI技術の軍事への活用は積極的に行われており、アメリカ、中国、ロシア、イスラエル、トルコなどでは自律型兵器の開発が進められており、現実的な兵器となってきている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースとして、2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2が兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。また2020年11月にはイランの核科学者のモフセン・ファクリザデ氏が自動車に乗っている時に、AIと複数のカメラを搭載したキラーロボットが顔認識技術で同氏を識別して銃撃して射殺したと報じられている。
2014年にツツ大司教らがキラーロボットの開発や使用禁止を訴えていた頃は、まだキラーロボットはSF映画の世界のような話で非現実的で理解できない人も多かったが、現在ではキラーロボットの脅威は現実味を帯びてきている。
2021年12月にスイスのジュネーブで国連の特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons: CCW)の会議が開催されて、自律型殺傷兵器について議論されていたが、一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」こととなった。
▼ツツ元大主教とともにキラーロボット開発禁止を訴えていたメアリー・ウェルハム氏