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「オミクロン株感染拡大でも学校閉鎖は最後の手段に」ユニセフが訴え

佐藤仁学術研究員・著述家
新型コロナウィルスの感染拡大防止のために青空教室で授業を行っているインドの学校(写真:ロイター/アフロ)

世界規模でオミクロン株の感染が拡大している。国連児童基金(ユニセフ)はオミクロン株の感染拡大を踏まえて、再び世界中の学校が閉鎖されてしまうことを懸念して「学校閉鎖は最後の手段にすべきだ」というリリースを出して訴えていた。

新型コロナウィルスの感染拡大によって2020年は特に世界中で学校が閉鎖された。学校閉鎖によって多くの子供たちが学校に行けず、授業も受けられずに退学したり、児童労働や児童婚を行うケースも目立った。またメンタルヘルスに不調をきたす子供も増加した。そのためユニセフは「学校閉鎖は可能な限り避けるべきであり、学校での授業を継続するための投資をできる限り行うべきです。学校は最後に閉鎖されるべきです。学校閉鎖は最後の手段です」と語っていた。

オンライン学習を受けられない子供たち

ユニセフはリリースの中で「リモート学習へのアクセスの欠如によって学校が閉鎖されると授業が受けられなくなってしまい児童労働をせざるをえなくなるなど子供から子供らしさを奪ってしまいます。またデジタルコネクティビティへの投資を増やして、世界中の子供が学校の授業を受けられるようにする必要があります」と述べていた。

日本でも新型コロナウィルス感染拡大によって2020年には多くの学校が休校になり、オンライン学習が導入された。小中学校は再開したが、大学では現在でもオンライン学習と対面授業のハイブリッド形式が主流だ。日本だけでなく世界中で新型コロナウィルス感染拡大によって学校が閉鎖され、オンライン学習やリモート学習が導入されたが、特に途上国では自宅にネットの回線がない、パソコンだけでなく学習用のスマホやタブレットを所有していない、たとえスマホを所有していても長時間の授業を受けられるほどの通信費を払えない子供が多い。

そのような子供たちはパンデミックで学校が閉鎖されてしまうと、教育を受ける機会はゼロになってしまい、また家計を助けるために働かざるをえない。特に女子は学校に行かないで家計を助けるためだけでなく、家族の世話をするためにも働くことが多い。さらに様々な犯罪に巻き込まれる可能性もある。そして学校が再開されても、授業についていけなかったり、仕事をやめるわけにいかずに学校をやめてしまうことも多い。また、たとえスマホやタブレットなど機器や回線のデジタルツールが整備され、リモート学習が可能な環境になったとしても、家では家族が多くて、狭くて自分の部屋もなくてオンライン学習で授業を受けられない子供も多い。

さらに授業は学校で受けるものという思い込みがあり「家にいるなら働いて家計を助けろ」とリモート学習に対する理解を示さない保護者への対応も必要になってくる。日本では考えられないだろうが「女子が学校に行く必要はない」「女子に教育は必要ない」と本気で今でも思っている人が多い。そのためデジタルツールの整備が完了しても、家でリモート学習ができない現在の環境と保護者のリモート学習への理解を得ることへの対応が重要になってくる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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