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トルコ 世界初「レーザービーム搭載軍事ドローン」敵の戦車や爆弾を上空からレーザーで破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
アジスガードが開発したレーザービーム搭載軍事ドローン「エレン」(同社提供)

トルコの軍事企業のアジスガードとトルコ科学技術研究会議(Tubitak)は世界初のレーザービームを搭載した軍事ドローン「エレン」の開発を行って試験を実施していると地元メディアのアナドルなどが報じている。

レーザービームを搭載した軍事ドローンは100メートルから500メートル先の敵の戦車や爆弾など爆発物をレーザービームで破壊することができる。鋼鉄にも90秒で穴を開けることができる。現在、試験中で完了したらトルコ軍に納品され実戦で活用される。

攻撃ドローンでも優位なトルコ

トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいる。今回のウクライナ軍による使用もロシアにとっても大きな脅威になっている。そして多くの紛争でトルコの軍事企業が開発した攻撃ドローンが使用されている。アゼルバイジャンやウクライナ、カタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノ・カラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。

ロシアの周辺国でNATO加盟国のポーランド、ラトビアもトルコのバイカル社の攻撃ドローン「バイラクタル TB2」を購入している。またアルバニアも購入意欲を示している。これらの国々がウクライナのようにトルコ製の軍事ドローンを装備して、いつでも攻撃可能な状態になることはロシアにとっても大きな脅威である。

また2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行うものは自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのガーディアンは報じていた。

攻撃ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

軍事ドローンはトルコだけでなくアメリカ、イスラエル、ロシア、インドなども注力している。トルコの軍事ドローンは周辺国にも輸出されて実戦でも使われており、大国にとっても脅威になっている。今回、世界初のレーザービーム搭載軍事ドローンを開発し、また一歩トルコの軍事ドローンが優位に立った印象だ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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