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「コロナで学校に通えない子供15億人、8割の対面授業が中止、児童労働も増加」ユニセフが報告書

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

児童婚増加も懸念

ユニセフ(国連児童基金)は2021年12月に「The report Preventing a lost decade: Urgent action to reverse the devastating impact of COVID-19 on children and young people(失われた10年にさせない:子どもや若者に対するCOVID-19の壊滅的な影響を防ぐため緊急の行動)」というレポートを出した。

ユニセフによると新型コロナウィルス感染拡大にともなって世界中の子供がかつてないほどの脅威を受けている。報告書によると、世界規模での学校閉鎖で15億人以上の生徒が学校に通えなかった。また新型コロナのパンデミックが流行した最初の年には約80%の対面授業が中止になった。さらに児童労働も1億6000万人以上となり過去4年で840万人増加している。パンデミックの影響で10年以内に児童婚が最大で1000万件増加する可能性を指摘している。

学校が閉鎖でもオンライン学習も受けられない子供たち

日本でも新型コロナウィルス感染拡大によって2020年には多くの学校が休校になり、オンライン学習が導入された。小中学校は再開したが、大学では今でもオンライン学習が主流だ。日本だけでなく世界中で新型コロナウィルス感染拡大によって学校が閉鎖され、オンライン学習やリモート学習が導入されたが、特に途上国では自宅にネットの回線がない、パソコンだけでなく学習用のスマホやタブレットを所有していない、たとえスマホを所有していても長時間の授業を受けられるほどの通信費を払えない子供が多い。

ユニセフによると、ウガンダでは学校閉鎖が300日以上だが、インターネット接続が行える家庭は0.3%で、またスーダンも学校閉鎖が230日以上続いており、インターネット接続が行える家庭は0.5%しかない。このように長期間にわたって学校が閉鎖されていても、自宅でリモート学習をできる環境がない。

そのような子供たちは教育を受ける機会はゼロになってしまい、また家計を助けるために働かざるをえない。特に女子は学校に行かないで家計を助けるためだけでなく、家族の世話をするためにも働くことが多い。さらに様々な犯罪に巻き込まれる可能性もある。そして学校が再開されても、授業についていけなかったり、仕事をやめるわけにいかずに学校をやめてしまうことも多い。また、たとえスマホやタブレットなど機器や回線のデジタルツールが整備され、リモート学習が可能な環境になったとしても、家では家族が多くて、狭くて自分の部屋もないのでオンライン学習で授業を受けられない子供も多い。

さらに授業は学校で受けるものという思い込みがあり「家にいるなら働いて家計を助けろ」とリモート学習に対する理解を示さない保護者への対応も必要になってくる。日本では考えられないだろうが「女子が学校に行く必要はない」「女子に教育は必要ない」と本気で今でも思っている人が多い。そして「学校に行けないで、働かないなら、早く結婚すべきだ」と思う親も多く児童婚も増加している。このようにデジタルツールの整備が完了しても、家でリモート学習ができない現在の環境と保護者のリモート学習への理解を得ることへの対応が重要になってくる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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