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ロシアの自律型戦車「Marker」極東の宇宙基地でパトロールの試験運用開始

佐藤仁学術研究員・著述家
自律型戦車Marker(ロシア軍事高等研究財団提供)

ロシア軍事高等研究財団は2020年12月に「Marker(ロシア語ではМаркер)」と呼ばれる自律型戦車の新たなモジュールを公開していた。そして2021年10月には自律型戦車Markerがロシア極東のボストチヌイ宇宙基地でパトロール用に試験運用されていることを明らかにした。自律して決まったルートを監視、偵察を行っている。

ボストチヌイ宇宙基地をパトロールしている自律型戦車Markerは兵器の搭載はしていないので攻撃は行わないが、ロシア軍事高等研究財団では2019年にMarkerによる戦闘イメージの動画を公開していた。無人の戦車が戦場で、自律的に標的を攻撃する映像だった。

ロシアは無人で自律型戦車のMarkerを「未来の戦争の兵器」として位置づけて開発を行ってきた。AI(人工知能)技術の軍事分野での活用は進んでおり、人間の判断を介さないで兵器が判断して標的を攻撃する「キラーロボット」と称される自律型殺傷兵器の開発も進んでいる。人間の判断を介さないで標的や人を攻撃して殺傷することが非倫理的、非人道的であると国際NGOやAI研究者、一部の国などが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。

だがロシアやアメリカ、イスラエルなどは自律型殺傷兵器の開発や使用に反対していない。中国は使用することは反対しているが開発には反対していない。まずは偵察や監視目的のパトロールとして試験運用を開始され、「未来の戦争の兵器」が実現に向けて着実に前進している。

▼ロシア軍事高等研究財団が公開している自律型戦車「Marker」の戦闘イメージ動画

自律型戦車Marker(ロシア軍事高等研究財団提供)
自律型戦車Marker(ロシア軍事高等研究財団提供)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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