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米国防総省の元ソフトウェアチーフ「米国は中国にAIで負けている。中国軍に比べて米軍は幼稚園レベル」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

米国防総省の元ソフトウェアチーフオフィサーのニコラス・チャリアン氏は人工知能技術(AI)においてアメリカは中国に完全に負けていると語り、そのことを理由に国防総省を退職した。チャリアン氏は米国防総省で初のチーフソフトウェアオフィサーに就任した。しかし彼は国防総省がAI技術とサイバーセキュリティをプライオリティにしないことから国防総省に抵抗して、同省を退職したとファイナンシャル・タイムズなど米国メディアが報じていた。

チャリアン氏は「AI技術ではアメリカは中国に完全に負けており、15年から20年遅れていて、中国に比べるとアメリカのAI技術を活用した戦争、マシンラーニング、サイバー攻撃の技術は、幼稚園レベルのようなのだ」と語っていた。

軍事に活用が進められるAI技術とキラーロボット

AI技術の発展にともなって、AIの軍事での活用も進められている。アメリカと中国だけでなくイスラエル、インド、イギリスなどでもAI技術の軍事への活用は積極的に進められている。

様々な情報やデータを収集してマシンラーニングを行い、AI技術を強化させて、軍事での偵察や監視にも活用されている。AI技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。ロボットは人間よりも3D業務(Dangerous:危険な、Dirty:汚い、Dull:退屈な)に優れている。疲れることもないし24時間稼働できるし、壊れたら代わりの軍事ロボットを持って来ればよい。特に国境警備は3D業務の典型であり、人間の軍人よりもロボットの方が適している。

またAI技術を搭載することによって、兵器の無人化も進んでいる。兵器の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。

一方で、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。米国政府は自律型殺傷兵器の開発と使用には反対していない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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