モロッコ、イスラエルと共同で「神風ドローン」開発へ:アルジェリアへの抑止強化
アルジェリアがモロッコとの国交断交から緊張へ
モロッコがイスラエルと攻撃用の軍事ドローンの共同開発を行う。イスラエルの国防大臣がモロッコを訪問した時に契約を交わして、両国で攻撃ドローンを開発する予定だとイスラエルやアラブのメディアが報じている。アルジェリアは2021年8月にモロッコとの国交を断行して緊張関係にある。
アルジェリアがモロッコと国交断絶した理由にもイスラエルが関係している。モロッコを訪問していたイスラエルのヤイル・ラピッド外相がアルジェリアに敵対的な発言をしたこと、モロッコ政府がイスラエル企業が開発したスパイウェア「ペガサス」をアルジェリアの当局やアルジェリア人に使用していたことをあげている。
そのためモロッコとしてもイスラエルとさらに協力を深化させることによって、アルジェリアへの抑止力を強化したいところだ。イスラエルは2021年5月にハマスとの紛争でドローンによる攻撃を実施していた。イスラエルとトルコは軍事ドローンのパイオニア国家だ。
モロッコはイスラエルと行動で軍事ドローンを開発しようと報じられているが、モロッコは2021年4月にはトルコからも軍事ドローン「Bayraktar TB2」を13機購入する契約を行い、9月にモロッコに納入された。攻撃ドローンの整備によって軍事力を強化している。
脅威の「神風ドローン」
攻撃用の軍事ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。
「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。
2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行う自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。