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南アフリカ ロックダウンによる学校閉鎖と学校への暴動略奪で40~50万人が退学・学習時間も大幅減

佐藤仁学術研究員・著述家
南アフリカで学校再開(写真:ロイター/アフロ)

学習時間も大幅減で1年分の遅れ

世界規模での新型コロナウィルス感染拡大に伴うロックダウンや学校閉鎖も世界中の多くの国で行われていた。南アフリカでもロックダウンによって学校閉鎖が行われていた。ユニセフ(国連児童基金)の調査によると、南アフリカでは新型コロナウィルスの感染拡大しているここ16カ月で40万人から50万人の学生が学校を中途退学したと報告している。現在、学校に通っていない子供は75万人以上いる。

さらに学習進度も、正常に学校が開校されていた時と比べて75%から1年分遅れている。新型コロナウィルスの感染拡大によって、学校が再開してからも時差通学で交代で通学したり、感染状況によって散発的に学校閉鎖も行われて、学習時間も54%減少している。

また南アフリカではロックダウンが行われていた時に、全国で2000校以上の学校が略奪の標的にされた。最近でもクワズール・ナタール州とハウテン州で暴動が起こり、140校以上が破壊されるなど生徒が学習できなくなってきている。

学校が閉鎖でもオンライン学習も受けられない子供たち

日本でも新型コロナウィルス感染拡大によって2020年には多くの学校が休校になり、オンライン学習が導入された。小中学校は再開したが、大学では今でもオンライン学習が主流だ。日本だけでなく世界中で新型コロナウィルス感染拡大によって学校が閉鎖され、オンライン学習やリモート学習が導入されたが、特に途上国では自宅にネットの回線がないこと、パソコンだけでなく学習用のスマホやタブレットを所有していないこと、たとえスマホを所有していても長時間の授業を受けられるほどの通信費を払えない子供が多い。

南アフリカでもインターネットを活用したオンライン授業だけでなくラジオ、テレビでのリモート学習が導入されたが、家にラジオやテレビがない家庭も多い。今回のユニセフの報告書でも、学校閉鎖で中退したのは、都市部の非公式居住区と農村部の貧困の家庭の子供がほとんどだった。

そのような子供たちはパンデミックで学校が閉鎖されてしまうと、教育を受ける機会はゼロになってしまい、また家計を助けるために働かざるをえない。特に女子は学校に行かないで家計を助けるためだけでなく、家族の世話をするためにも働くことが多い。さらに様々な犯罪に巻き込まれる可能性もある。そして学校が再開されても、授業についていけなかったり、仕事をやめるわけにいかずに学校をやめてしまうことも多い。また、たとえスマホやタブレットなど機器や回線のデジタルツールが整備され、リモート学習が可能な環境になったとしても、家では家族が多くて、狭くて自分の部屋もなくてオンライン学習で授業を受けられない子供も多い。

さらに授業は学校で受けるものという思い込みがあり「家にいるなら働いて家計を助けろ」とリモート学習に対する理解を示さない保護者への対応も必要になってくる。日本では考えられないだろうが「女子が学校に行く必要はない」「女子に教育は必要ない」と本気で今でも思っている人が多い。そのためデジタルツールの整備が完了しても、家でリモート学習ができない現在の環境と保護者のリモート学習への理解を得ることへの対応が重要になってくる。

▼コロナによるロックダウンの学校閉鎖から再開して消毒のために並ぶ学生

写真:ロイター/アフロ

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学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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