12万人のユダヤ人を救った実話を元にした映画『アウシュヴィッツ・レポート』予告動画解禁
第二次世界大戦時にナチスドイツが支配下においた地域でユダヤ人を差別、迫害して約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。そのホロコーストの象徴的な存在の1つがアウシュビッツ絶滅収容所。アウシュビッツ絶滅収容所では欧州からのユダヤ人やロマ、政治犯ら110万人以上が殺害された。
そのアウシュビッツ絶滅収容所を脱走した男たちの実話を描いた映画『アウシュヴィッツ・レポート』(原題:The Auschwitz Report)が日本でも7月30日から公開される。欧州では4月から公開されていた。
1944年4月、アウシュビッツ絶滅収容所で収容者の遺体の記録係をしていたスロバキア系ユダヤ人のアルフレートとヴァルターが、アウシュビッツの苛酷な実態を外部に伝えるために脱走を実行。奇跡的に救出された2人は赤十字職員にアウシュビッツ絶滅収容所での実態を告白する。日本で公開される『アウシュヴィッツ・レポート』の予告編動画と場面写真が解禁された。
毎年制作されるホロコースト映画
ホロコーストを題材にした映画やドラマはほぼ毎年制作されている。今でも欧米では多くの人に観られているテーマで、多くの賞にノミネートもしている。日本では馴染みのないテーマなので収益にならないことや、残虐なシーンも多いことから配信されない映画やドラマも多い。
ホロコースト映画は史実を元にしたドキュメンタリーやノンフィクションなども多い。実在の人物でユダヤ人を工場で雇って結果としてユダヤ人を救ったシンドラー氏の話を元に1994年に公開された『シンドラーのリスト』やユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン氏の体験を元に2002年に公開された『戦場のピアニスト』などが有名だ。実話を元にしている『アウシュヴィッツ・レポート』もこちらだ。史実を元にした映画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の授業で視聴することも多い。
一方で、フィクションで明らかに「作り話」といったホロコーストを題材にしたドラマや映画も多い。1997年に公開された『ライフ・イズ・ビューティフル』や2008年に公開された『縞模様のパジャマの少年』などはホロコースト時代の収容所が舞台になっているが、明らかにフィクションであることがわかり、実話ではない。
戦後75年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。デジタル化された証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。
ホロコースト教育では多くのホロコースト映画やドラマも視聴されている。そして世界中の多くの人にとってホロコーストは本や映画、ドラマの世界であり、当時の様子を再現してイメージ形成をしているのは映画やドラマである。その映画やドラマがノンフィクションかフィクションかに関係なく、人々は映像とストーリーの中からホロコーストの記憶を印象付けることになる。
欧米やイスラエルでは民族憎悪やヘイトスピーチ、人種差別がいまだに続いている。欧米では今でも反ユダヤ主義が根強いが、アジア系やアフリカ系、ラテン系も差別対象にされることも多い。特に新型コロナウィルス感染拡大によってアジア系への風当たりが強くなってきている。ホロコースト教育では、ホロコーストの歴史以外にも、そのような現在の民族憎悪や人種差別をなくそうという方針が基底にある。今回の予告動画の最後に「過去を忘れる者は、必ず同じ過ちを繰り返す」とアメリカの哲学者のジョージ・サンタヤナの言葉が掲載されている。欧米やイスラエルでは二度とホロコーストを繰り返さないという強い信念に基づいてホロコースト教育が行われている。だが残念ながら、今でも民族憎悪や人種差別は減っていないようだ。
▼『アウシュヴィッツ・レポート』予告動画
▼「The Auschwitz Report」オフィシャルトレイラー
▼映画「アウシュヴィッツ・レポート」