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コロナのパンデミックで児童婚が2倍以上に、さらに400万人の女子が犠牲に:NGOが報告

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2023年までにさらに400万人の少女が結婚させられる恐れ

国際NGOワールド・ビジョンが児童婚に関する報告書「Breaking The Chain」を発表した。同報告書によると、彼らが支援活動を行っているアフガニスタン、バングラデシュ、セネガル、ウガンダにおいて、2020年3~12月の児童婚の件数が2019年の同時期と比べて2倍以上になった。また新型コロナウイルスのパンデミックによって、さらに増加すると懸念を表明。新型コロナの影響で児童婚の件数を過去25年間で最大に増加させており、ワールド・ビジョンは2023年までにさらに400万人の少女が結婚させられる恐れがあると警告している。児童婚が急増した背景には、パンデミックに起因する生計確保手段の喪失、貧困の増加、教育や支援サービスへのアクセスの欠如などがあるとのこと。

ワールド・ビジョンのデイナ・ブズセア氏は「毎年1200万人もの少女たちが18歳の誕生日を迎える前に結婚させられるのは悲痛です。教室の空席、商品として扱われる少女たち、失われる人間的・経済的可能性、そのどれもが悲劇を物語っています。私たちは、家庭の経済的困窮、無理解等が、最も脆弱な地域で児童婚がなくならない要因の一つと考えています。新型コロナのパンデミックとロックダウンによって、少女たちは、健やかな子ども時代を生きる権利、そして自分たちの可能性を実現する権利を脅かされています。新型コロナのパンデミックにより、さらに400万人の少女たちが結婚させられる可能性があります。もう時間がありません。少女たちを守るための重大な変化がなければ、多くの未来が台無しになってしまいます。政府や援助機関等は、子どもを保護する法律が順守されることを担保し、児童婚を終わらせるための強固な世界的な対応策を立案するために、一層の努力を重ねなければなりません」とコメントしている。

学校が閉鎖でもオンライン学習も受けられない子供たち

ワールド・ビジョンでも新型コロナ感染拡大によって、児童婚が急増した背景に生計確保手段の喪失、貧困の増加、教育や支援サービスへのアクセスの欠如をあげている。特に学校が閉鎖され、学校に通えなくなったことの影響は大きい。

日本でも新型コロナウィルス感染拡大によって2020年には多くの学校が休校になり、オンライン学習が導入された。小中学校は再開したが、大学では今でもオンライン学習が主流だ。日本だけでなく世界中で新型コロナウィルス感染拡大によって学校が閉鎖され、オンライン学習やリモート学習が導入されたが、特に途上国では自宅にネットの回線がないこと、パソコンだけでなく学習用のスマホやタブレットを所有していないこと、たとえスマホを所有していても長時間の授業を受けられるほどの通信費を払えない子供が多い。

そのような子供たちはパンデミックで学校が閉鎖されてしまうと、教育を受ける機会はゼロになってしまい、また家計を助けるために働かざるをえない。特に女子は学校に行かないで家計を助けるためだけでなく、家族の世話をするためにも働くことが多い。さらに様々な犯罪に巻き込まれる可能性もある。そして学校が再開されても、授業についていけなかったり、仕事をやめるわけにいかずに学校をやめてしまうことも多い。また、たとえスマホやタブレットなど機器や回線のデジタルツールが整備され、リモート学習が可能な環境になったとしても、家では家族が多くて、狭くて自分の部屋もなくてオンライン学習で授業を受けられない子供も多い。

さらに授業は学校で受けるものという思い込みがあり「家にいるなら働いて家計を助けろ」とリモート学習に対する理解を示さない保護者への対応も必要になってくる。日本では考えられないだろうが「女子が学校に行く必要はない」「女子に教育は必要ない」と本気で今でも思っている人が多い。そのためデジタルツールの整備が完了しても、家でリモート学習ができない現在の環境と保護者のリモート学習への理解を得ることへの対応が重要になってくる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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