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ロシア外相「トルコはウクライナに軍事ドローンを提供すべきではない」大国ロシアも脅威の攻撃ドローン

佐藤仁学術研究員・著述家
ロシア外相のセルゲイ・ラブロフ氏(写真:ロイター/アフロ)

「ウクライナの軍事化と緊張関係を生み出すことをやめるべきだ」

ロシアの外相セルゲイ・ラブロフ氏がトルコや他の国がウクライナにドローンなどの武器を提供して、ウクライナの軍事力を強化していることに警鐘を鳴らした。セルゲイ・ラブロフ氏はロシアメディアのスプートニクの取材で語っていた。ウクライナの上空でトルコのバイカル社のドローン「バイラクタル TB2」が飛行しているとロシア政府は確認している。さらにウクライナは48機の「バイラクタル TB2」をトルコから購入すると2020年10月に報じられていた。

セルゲイ・ラブロフ氏は「トルコを含む全ての国はウクライナにドローンなどの武器を提供することによって、ウクライナの軍事化と緊張関係を生み出すことをやめるべきだ。ウクライナ政府はトルコのドローンを導入して紛争の激化と緊張関係を高めて、状況を変えようとしている。紛争が続いているドンバス地域では明らかにトルコのドローンが上空を飛んでいて、全く喜ばしい状況ではない。トルコはロシアから様々な製品を購入しており、それでドローンを製造して他国に輸出しているのは問題だ。これから2か国で議論していきたい」と訴えていた。

ウクライナはトルコから攻撃ドローンや偵察・監視のドローンを購入している。トルコとウクライナは軍事や経済で協力関係にあり、トルコのエルドアン大統領はトルコのイスタンブールを訪問していたウクライナのヴォロディーミル・ゼレンスキー大統領と会談を行って「ウクライナが平和になるための協力は惜しまないし、支援していく」と語っていた。

大国ロシアにとっても脅威の攻撃ドローン

トルコの攻撃ドローンの開発力は優れており、シリアやリビアでの内戦でも利用されている。またアルメニアとアゼルバイジャンの紛争でも「神風ドローン(Kamikaze Drone)」と呼ばれる標的を認識すると突っ込んでいき攻撃を行うドローンなどが使用され、アゼルバイジャンの勝利に貢献した。例えばトルコの軍事企業STM社の神風ドローン「Kargu-2」などが有名で、技術開発力も高く、多くの国がトルコのドローンに興味を示している。ロシアとしてもウクライナ上空をトルコの攻撃ドローンや偵察・監視ドローンが飛行することは脅威である。ロシアでは軍事ドローン迎撃の対策も進められている。

「神風ドローン」のように標的に突っ込んでいく攻撃ドローンは低コストで大群で攻撃してくることも可能で破壊力もある。ウクライナやトルコのような国でもロシアのような大国に対しても大きなダメージを与えることができる。いわゆる非対称な戦いが可能であり、戦場の在り方を変えようとしており、そのような攻撃ドローンはロシアのような大国にとっても脅威である。

▼ウクライナで使用されているトルコ製のドローン「バイラクタル TB2」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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