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アマゾン「ヒトラーのちょび髭に似ていた」アプリのロゴを変更

佐藤仁学術研究員・著述家
左が改定前。右が現在のアマゾンアプリのアイコン。(公開された画像より筆者作成)

 アマゾンのアプリのロゴが2021年1月にショッピングカートのデザインから変更された。段ボールをイメージしたものでアマゾンのマークと青色のギザギザのガムテープをデザインしたものだった。だが、このデザインがナチスドイツのアドルフ・ヒトラー総統が微笑んでいるように見えるという声がSNSなどで多く上がった。たしかに言われてみれば、青色のギザギザがヒトラーのちょび髭に見えるかもしれない。ヒトラーを批判した1940年に公開されたチャップリンが演じた映画「独裁者」を思い出す人も多いだろう。

 このロゴが表示されたのはイギリス、スペイン、イタリア、オランダのiPhoneのみだったようだが、欧米では「ヒトラーのちょび髭に似ている」、「ヒトラーを想起させる」ということでSNSであっと言う間に拡散された。アマゾンが変更した新たなロゴは欧米のメディアでも多数報じられて、かなりセンシティブに反応していた。「新しいロゴがヒトラーのちょび髭を想起させる」と嫌悪感を示す人もいたし、「ヒトラーを想起するほどのものでもないから大騒ぎしすぎだ」という冷静な意見もあった。そして2021年2月にはアイコンの修正を行って、青色のガムテープのギザギザの箇所を直線で右側が折れ曲がったデザインに変更し、現在のアマゾンのアプリのロゴになった。

「ヒトラーやナチス、ホロコーストを想起」には非常に敏感に反応

 600万人以上のユダヤ人やロマ、政治犯を殺害したナチスドイツだが、ドイツなど欧州の諸国ではハーケンクロイツ(カギ十字)などナチスドイツや総統のヒトラーを想起させるものを掲げたりすることはナチス禁止法で禁止されている。公共の場でナチス式の敬礼も禁止されている。

 また日本人にとってはあまり馴染みがないかもしれないが、欧米や中東諸国では現在でも反ユダヤ主義が根強く、ユダヤ人はSNS上でもヘイトスピ―チや民族憎悪の対象になりやすく、ヒトラーやナチスドイツを想起させるものだけでなく、ホロコーストを想起させるような商品に対しても非常にセンシティブである。過去に何回もそのような商品が販売されて、世界中で抗議の声が上がりネットで炎上したことがある。2016年10月には日本のアイドル欅坂46がナチス風の衣装を着てコンサートを行った際には、「2度とホロコーストの悲劇を繰り返さない」という強い信念を持って全世界の反ユダヤ主義やナチスに関わる動向を監視しているサイモン・ウィーゼンタール・センターがプロデューサー秋元康氏とソニー・ミュージックに対して強い怒りを露わにし、謝罪を要求していた。

 そのため、アマゾンだけでなく少しでも「ヒトラーのちょび髭を連想させる」、「ナチスを思い出す」といった声が上がったら、すぐにロゴを変更したり、商品を回収したりすることはよくある。

▼アマゾンの新しいロゴが「第三帝国」(ナチスドイツ)を想起させるとの声

▼アドルフ・ヒトラー

写真:Shutterstock/アフロ

▼チャップリンが演じた「独裁者」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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