イスラエルのハイファ大学とTikTok ホロコーストを伝えるイベント開催

(写真:Shutterstock/アフロ)

TikTokでホロコーストの犠牲者になりたがる若者たち

 1945年1月27日にアウシュビッツ絶滅収容所がソ連軍に解放されたため、1月27日は国際ホロコースト記念日である。その国際ホロコースト記念日にイスラエルのハイファ大学と、若者に人気のショート動画SNSのTikTokは共同で、ホロコーストについて正確な情報を伝えるオンラインイベント「Ask Me Anything: Holocaust(ホロコーストについて何でも聞いて)」を開催した。

 TikTokは日本だけでなく欧米の若者にも人気があるが、昨年は「ホロコーストで殺害されました」とホロコーストの犠牲者になりきるようなショート動画が多く投稿されていた。第二次世界大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。欧米の若者らのホロコーストを矮小化するような動画に対して、アウシュビッツ博物館も「TikTokでの犠牲者になりたがるトレンドは、心が痛みますし、非常に攻撃的な内容です。いくつかの動画は危険なものであり、歴史を矮小化したものになっていると思います。アウシュビッツで起きた悲劇は痛ましいものです。ホロコーストの歴史はもっと正確に、かつ敬意をもって表現されることが重要です」と訴え、「しかし、様々な動機でこのようなTikTokの動画をアップする若者たちがいます。中にはホロコーストの犠牲者を冒涜するような表現もあります。一方で(家族をホロコーストで失った人たちはそのような)個人的な思い出を表現するのにTikTokが必要な手段だと考えている人もいるようです。彼らにとってはTikTokのような馴染みある動画プラットフォームで、強い感情で表現しようとしています。このような動画がトレンドになることをもっと議論すべきです。若者たちは若者らしい感情を強く揺り動かすような表現でSNSにて発信します。SNSは我々の生活の中で、コミュニケーションの一部になっています。SNSでの投稿においても常にホロコーストの犠牲者に対して敬意を払い、正しい表現と言葉で歴史的な事実を正確に語っていかないといけません。先生方は是非若い人たちとホロコースト犠牲者に対して敬意を表しながら、どのように表現するかを議論すべきです。これは教育的なチャレンジです」と伝えていた。

ホロコーストを知らない若い世代

 TikTokの利用者は16歳から24歳が41%を占めている。欧米ではホロコースト教育が多くの学校で導入されているが、それでもホロコーストについて知らない若者が多い。アメリカでの調査結果によると、アメリカのミレニアル世代のうち63%がホロコーストで600万人のユダヤ人が殺害されたことを知らなかった。約3割が200万人くらいだろうと答えていた。また48%が強制収容所やゲットーの名前を全く知らなかったし、11%の人がユダヤ人がホロコーストを引き起こしたと回答していた。

 ハイファ大学大学院にはホロコースト学の修士課程があり、今回のTikTokとのイベントには、そこの学生らが参加。現在の世界中でホロコーストに関する知識や情報が少ないことに対して、ホロコーストに関する正確な情報を伝えていた。また「Ask Me Anything: Holocaust(ホロコーストについて何でも聞いて)」というタイトルの通り、ホロコーストに関する多くの質問に対して答えていた。ハイファ大学の学長のロン・ロビン氏は「近年ではホロコーストに関する正確な知識をもった人が減少してきています。ホロコーストに関して生存者の証言や記憶、正しい歴史を伝えていくことが私たちの義務です。ホロコーストは人類にとって最も暗くて辛い時期でした。世界中の若い人たちにホロコーストの真実を伝えていき、ホロコーストの歴史を忘れないようにすることが私たちの義務です」と語っていた。

 現在でも、欧米や中東諸国では反ユダヤ主義が根強く、反ユダヤのヘイトスピーチや民族憎悪に関するSNSへの投稿は後を絶たない。TikTokはFacebookやTwitterと同じようにヘイトスピーチや民族憎悪に対するコンテンツ削除の強化を行っている。ナチスを礼賛したり白人至上主義や陰謀論、ホロコースト否定論などの反ユダヤ主義やユダヤ人が世界を支配しているといったユダヤ陰謀論などの偽情報、LGBTを傷つけるコメントの削除を強化している。TikTokは2020年になってアメリカで38万件以上のヘイトスピーチに関する投稿を削除した。

QAセッションの様子(ハイファ大学提供)
QAセッションの様子(ハイファ大学提供)