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民主党大統領候補ブーテジェッジ氏・ヤン氏「米国の安全保障においてAIは不可欠」中国の脅威を強調

佐藤仁学術研究員・著述家
ピート・ブーテジェッジ氏とアンドリュー・ヤン氏(写真:ロイター/アフロ)

 2020年の米国大統領選挙の民主党の大統領候補のピート・ブーテジェッジ氏(Pete Buttigieg)とアンドリュー・ヤン氏(Andrew Yang)は2019年12月に開催された民主党の大統領候補者のディベートでアメリカの国家安全保障にとってAI(人工知能)は重要であり、欠かせないと述べた。2人は2019年6月と9月に開催されたディベートにおいてもAI技術による将来の仕事の在り方やオートメーションについて議論していた。

 ブーテジェッジ氏は中国がAI技術の開発で秀でていることに対して「もし、我々アメリカが中国にAI技術開発で大きく後れを取ってしまうのであれば、それはアメリカにとって非常に大変なことになりうるし、大きな損害であろう」と警鐘を鳴らした。

 台湾系アメリカ人のヤン氏は気候変動や核問題、軍事ドローン、テロリストなどの非国家アクターとともにAIを21世紀のアメリカが直面している5つの脅威の1つであると強調。「現時点で、既にアメリカは中国とのAI技術を活用した軍事競争には負けている可能性が高い。中国はアメリカよりも多額の資金を投資して、もっと多くのデータや情報にアクセスすることによってAI技術の開発を行っており、その点でアメリカはまだ中国に追いついていない」と中国のAI技術開発と軍事技術への応用に対して言及。さらにヤン氏は「アメリカ政府は技術開発で24年遅れている」と繰り返し、国家安全保障に向けたデータ活用について国際機関を創設して、中国やロシアに対峙していかないといけないと強調し、「世界中のデータを管理するWTOのような新たな国際機関を今すぐに創設することを提案していきたい」とコメント。

 民主党の大統領候補は、トランプ政権が国家安全保障のためのAI技術開発の投資が少ないと批判している。彼らの意見はNational Security Commission on AI (NSCAI) のレポートにも反映されて、2019年11月に議会に提出。同レポートにおいても中国のAI技術開発の投資がアメリカの50倍であり、AI技術は軍事分野でも活用されるようになり、将来の戦争の在り方を変えていくことになりうるだろうと述べている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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