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クリアパス・ロボティクス社CTO、キラーロボット開発に懸念「真剣に議論するのが5年遅すぎた」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 カナダのロボットメーカーClearpath Robotics(クリアパス・ロボティクス社)のCTOで共同創業者のRyan Gariepy氏が自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)についてThe Recordのインタビューで語っていた。自律型殺傷兵器(LAWS)はキラーロボットとも呼ばれており、AI(人工知能)の発展によって、ロボットやAIを搭載した兵器が人間の判断を介さないで、ロボット自身の判断で標的や人間を攻撃してくる。多くの国やNGO、著名人らが、キラーロボットの危険性について、兵士と市民の区別ができないで攻撃してくるといった倫理的な観点から反対している。

 Clearpath Roboticsでは自律走行型搬送ロボットなどを開発しているがキラーロボットの開発はしていない。また同社はキラーロボットの開発に反対しているNGO「Campaign to Stop Killer Robots(キラーロボット・ストップ・キャンペーン)」に企業として初めて参加した。Ryan Gariepy氏は「自律型ロボットには、人間の判断を介さないで攻撃をしかけてくる恐れがあり、そのことについて懸念を表明し、真剣に議論を開始するのが5年遅すぎた」と語っていた。キラーロボットの開発に対する懸念については5年前からも議論はされていたが、当時はAIがここまで普及しておらず、自律型殺傷兵器やキラーロボットが現実的ではなく、SF映画の世界のようなもので非現実的だと思われていた。だが、現在では自律したロボットが自身の判断で標的や人間を攻撃してくることが現実的な脅威となっている。

 Ryan Gariepy氏は「キラーロボットは偶発的で突発的な紛争をもたらす可能性がある。またキラーロボットによって多くの市民が負傷することも懸念される。さらにテロリストなどの非国家によってキラーロボットが活用されてしまう可能性もある。日に日にAIとロボット技術は発展していき、キラーロボットが開発されるのは容易になってきている」と語った。また同氏は「自律したロボット自身の判断ではなく、兵器は必ず人間の判断を介して攻撃をする必要がある。人の生死に関わる攻撃の判断は、ロボットではなくて必ず人間が行うべきだ」と語った。

 NGO「キラーロボット・ストップ・キャンペーン」によると、キラーロボットの出現に懸念を表明し、反対する国や機関、人は増えており、現在28か国、110のNGO、4500人以上のAIの専門家らがキラーロボットの開発に反対している。Ryan Gariepy氏は、キラーロボットの開発の反対について、1997年のオタワ条約(対人地雷全面禁止条約)のようなフレームワークを適用していくべきだと主張。「対人地雷を開発することは容易だが、対人地雷が使用されることによる悲惨な状況については世界中の人が認識している。キラーロボットが開発されて、実戦で活用される前に、キラーロボットの開発を禁止して登場を回避していくことが重要だ。我々は戦争を回避することはできないが、戦争がどのような結果をもたらすかを想定して、兵器の制限をしていくべきだ」とコメント。

 対人地雷条約はカナダのオタワで署名されたことからオタワ条約とも呼ばれているが、キラーロボットに対するカナダ政府の姿勢は賛成もしていないが、強く反対もしていない。ウォルター大学のBranka Marijan氏は「カナダ政府はキラーロボット開発に対する国際社会のキャンペーンを様子見をしながら、"必要に応じて議論をしていきましょう"という姿勢で、そのようなカナダ政府の態度が問題で心配だ」と語っていた。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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