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オーストリア・ウィーンで中国メーカー『空飛ぶタクシー』飛行試験に成功「一番の課題は市民の心の壁」

佐藤仁学術研究員・著述家
ウィーンのサッカースタジアム上空を飛行(Leonhard Foeger)

「市民が『空飛ぶタクシーは安心して乗れるものだ』心の壁が一番の課題だ」

 オーストリアのウィーンで「空飛ぶタクシー」の飛行実験が成功した。「空飛ぶタクシー」とは、パイロットが搭乗しないで、人工知能を搭載して、自動運転で数人が乗車して空を移動する交通手段。「空を飛ぶから飛行機では?」と思う方も多いと思うが、英語では「flying taxi」(空飛ぶタクシー)と呼ばれている。

 オーストリアのウィーンにあるサッカースタジアムで2019年4月に中国メーカーのEHangが製造した「空飛ぶタクシー」が公開され、実際に約10分間、空を飛んで見せた。

EHangが開発した「空飛ぶタクシー」(Leonhard Foeger)
EHangが開発した「空飛ぶタクシー」(Leonhard Foeger)
ウィーンのサッカースタジアム上空を飛行(Leonhard Foeger)
ウィーンのサッカースタジアム上空を飛行(Leonhard Foeger)

 EHangのチーフマーケティングオフィサーのDerrick Xiong氏はウィーンでの「空飛ぶタクシー」の試験飛行の時に「我々の最も困難でチャレンジングなのは、技術開発でも導入に向けた規制でもない。一般市民が『空飛ぶタクシーは安心して乗れるものだ』と心の壁が一番の課題だ」と語った。2021年半ばまでには300機の商用導入を目指している。商用開始時には30分の飛行ができるようになる。

「オーストリアが『空飛ぶタクシー』を導入する1番最初の国になりたい」

 「空飛ぶタクシー」のデモンストレーションに参加したオーストリアの交通大臣のNorbert Hofer氏は「オーストリアが『空飛ぶタクシー』を導入する1番最初の国になりたい」とコメント。

 現在、ボーイングなどの航空機メーカーやスタートアップなど世界中の多くのメーカーが開発を行っており、ドバイやドイツなど世界各国で「空飛ぶタクシー」の導入に向けた試験が行われている。垂直飛行が可能なため、空港や滑走路が不要でビルの屋上などから乗降できる。またガソリンでなく電気で動作することも「空飛ぶタクシー」の特徴。

 地上の道路の交通渋滞の解消や、石油を使用しないことから環境への配慮など「空飛ぶタクシー」の導入への期待は高い。導入に向けては各国で規制の問題や技術的な問題などクリアしなければならない課題もあるが「空飛ぶタクシー」で空を簡単に移動できることも、もはや空想の世界の話ではなく、かなり現実に近づいている。

▼ウィーンでの「空飛ぶタクシー」の飛行試験の様子を伝える報道

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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