米国ダラスのホロコースト博物館、生存者とホログラムで対話「永遠に語り継いでいく」

Max Glauben氏(ダラスホロコースト博物館提供)

欧米で進む「ホロコーストの記憶のデジタル化」

 第二次大戦時にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を大量に虐殺したホロコーストだが、そのホロコーストを生き延びることができた生存者たちも高齢化が進んでいき、その数も年々減少している。彼らの多くが現在でも博物館などで若い学生らにホロコースト時代の思い出や経験を語っているが、だんだん体力も記憶も衰えてきている。

 現在、欧米ではそのようなホロコーストの記憶を語り継ぐために、ホロコースト生存者のインタビューと動く姿を撮影し、それらを3Dのホログラムで表現。博物館を訪れた人たちと対話して、ホログラムが質問者の音声を認識して、音声で回答できる3Dの制作が進んでいる。

あたかも、目の前にホロコーストの生存者がいるようで、質問に対してリアルタイムに答えられる。ホロコーストの生存者らが高齢化しても、亡くなってからでも、ホログラムで登場して未来の世代にホロコーストを語り継いでいくことができる。

 映画「シンドラーのリスト」の映画監督スティーブン・スピルバーグが寄付して創設された南カリフォルニア大学(USC)のショア財団ではホロコースト時代の生存者の証言のデジタル化やメディア化などの取組みを行っている。南カリフォルニア大学ではホログラムでの生存者とのインタラクティブな対話の技術開発にも積極的で、同大学ではこの取組を「Dimensions in Testimony」プロジェクトと呼んでいる。

(ダラスホロコースト博物館)
(ダラスホロコースト博物館)
ホログラムでの撮影を行うMax Glauben氏(ダラスホロコースト博物館)
ホログラムでの撮影を行うMax Glauben氏(ダラスホロコースト博物館)

永遠にホロコーストを語り継いでいく

 米国ダラスにあるホロコースト博物館でも3Dとホログラムによるホロコースト生存者とのインタラクティブな会話の展示が2019年9月に導入されようとしている。ダラスのホロコースト博物館では、1928年にポーランドのワルシャワで生まれた91歳のMax Glauben氏のホログラム化が進められている。Max Glauben氏は、1984年にダラスのホロコースト博物館創設の時から関わっており、それからもホロコーストの語り部として多くの若者らに自身のホロコーストの経験を語ってきている。

 ダラスのホロコースト博物館のMary Pat Higgins氏は「技術の発達によって、ホロコーストを経験した人たちの話を、彼らが亡くなった後も永遠に語り継いでいくことができる。彼がホロコースト時代に経験したことは人類にとっての財産であり、多くの人々に生きる希望を与えてきた」と語っている。Max Glauben氏はこれからもホロコーストに関する1000の質問にインタラクティブに答えていくことができる。ワルシャワでのゲットーでの生活や、強制収容所に送られて13歳で家族全員を失った時のことなどを語り継いでいく。

かかる製作コスト:1人の生存者で2億7000万円

 ホロコースト生存者らをホログラムで表現し、永遠にホロコーストの経験を語っていってもらおうという取組みは欧米のホロコースト博物館で積極的に進んでいるが、製作コストも相当にかかる。1人の人を撮影して3Dとホログラムで表現するために250万ドル(約2億7000万円)かかる。南カリフォルニア大学のショア財団の財政面と技術面での支援があるから実現できている。

 ロサンゼルスにあるスタジオで18台のカメラであらゆる角度からホロコースト生存者らを撮影する。撮影も1週間以上で1000問以上の質問が繰り返される。そのためホロコーストの生存者の誰でもがホログラムで記憶をデジタル化することができるわけではなく、撮影にも相当な体力を要する。それでも、ホロコースト経験者の記憶と体験を未来に語り継いでいくために、欧米のユダヤ人らは積極的にホロコーストの記憶のデジタル化を進めようとしている。