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バチカン、国連の会合でキラーロボット登場に反対「人間性をはく奪するもので、最も重要な問題」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 人工知能とロボットの発展によって、ロボットが自律して自らの判断で人間や標的物を攻撃してくる「自律型殺傷兵器システム(LAWS)」や「キラーロボット」の登場が国際社会では懸念されている。国連においても、各国の代表者が集まって真剣に議論されている。2019年3月にもジュネーブで開催された国連の会合でオブザーバーとして参加しているバチカン市国の代表で、大司教のIvan Jurkovic氏がキラーロボットの登場に懸念を示し、反対を表明した。

「倫理観やモラルもなく人間を攻撃してくるべきではない」

 大司教のIvan Jurkovic氏は「自律型兵器やキラーロボットに対して、人間性の本質や公共の良心はどのように対応すれば良いでしょうか?人間を介さないでロボットが判断して、倫理観やモラルもなく人間を攻撃してくるべきではない。バチカン(聖座)は、キラーロボットに対していくつもの懸念を示し、警告を発してきました。人間の倫理観やモラルの観点だけでなく、国際人道法の観点からも、キラーロボットは人間性をはく奪するものであり、キラーロボットを開発しないこと、登場させないことこそが、現代社会において最も重要なことだ」と訴えた。

 人工知能とロボット、兵器技術の発達に伴ってロボットが自ら判断して人間を攻撃してくることは、SF映画の世界の話のようだが、実際に国連でも真剣に議論されており、多くの国が懸念を示しているものの、キラーロボットに対する各国での足並みは揃っていない。バチカン(聖座)はカトリックらしく、特に倫理観と人間のモラルの観点を強調しているが、ロボットには倫理観やモラルはない。キラーロボットは実際には、まだ登場はしていないが「ロボットが自ら判断して人間を攻撃してきてロボットに殺されることを許して良いかどうか」という人間の倫理観やモラルが問われている。

 

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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