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インドで拡大する中国製品ボイコット運動:インドのスマホ市場は中国メーカーばかり

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

インドで拡大する中国製品不買・ボイコット運動

 2019年3月13日の国連安保理でアメリカとイギリスが、インド・パキスタン関係の緊張を引き起こすテロ攻撃を指揮したMasood Azhar氏を国際テロリストの名簿に加えるように要求したが、中国代表団が拒否した。インド政府は中国の拒否に対して「失望した」と述べており、インド国内では中国製品の不買運動、ボイコットの勢いが増している。SNSでも「#BoycottChineseProducts」(中国製品のボイコット)のハッシュタグをつけて、不買運動、ボイコットを呼びかけている。

 インドには洋服や日常品、家電、おもちゃなど中国製品が溢れている。それらを街で燃やして抗議を示している運動も見られている。だが、インド人にとって一番身近な製品で、簡単にボイコットすることができない中国製品がスマホだ。インドでもスマホが広く普及しており、インド人の生活にとって欠かせないものの1つだ。そして、インドで流通しているスマホのほとんどが中国メーカーのものだ。

インドのスマホ市場、上位5社のうち4社が中国メーカー

 2018年10月~12月にインドでのスマホ販売シェアも、上位から小米(中国)27%、サムスン(韓国)22%、vivo(中国)9%、Realme(中国)8%、OPPO(中国)7%と上位5位のうち4社が中国メーカーで、2018年にインドでのこの4社の売上は72億ドル(7200億円)である。それ以降もHuaweiやLenovoなど中国メーカーが続いている。

 50ドル~100ドルの中国メーカーのスマホがインドでの一番の売れ筋商品で、高価なiPhoneはほとんど売れない。かつては一番売れていたサムスンのスマホも小米(シャオミ)に抜かれてしまった。かつてはインドの地場メーカーもスマホを販売しており、上位にランクインしていたが、中国メーカーの品質と価格には勝てずに、現在では売れなくなってしまい市場からはほとんどが姿を消してしまった。

 今までインド人は実利主義で、どこの国のメーカーかを意識しないでスマホを購入してきたが、インド国内での中国製品排除、ボイコットの動きの中で、自分たちが毎日利用しているスマホが中国メーカーであることに気が付いた人も多い。サムスンが韓国メーカーであることを知らないインド人も多い。インドでの中国製品ボイコット運動の流れが、今後のインドのスマホ市場にどのような影響を与えるのだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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