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ドイツ、キラーロボットの規制に向けた国際協力の必要性を主張

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「キラーロボットについては多国間での議論が必要」

 ドイツの外務大臣のハイコ・マース氏は、2019年3月にベルリンで開催された「2019. Capturing Technology. Rethinking Arms Control」において、兵器の自律化によるキラーロボット、自律型殺傷兵器の規制に向けた国際協力の必要性を訴えた。マース外相は「キラーロボットがロボット自身の判断によって、人間を攻撃してきて人間が殺されるリスクがあり、それは人間のコントロールを超越しようとしている。そしてそれは決してSFの話ではなく、実際に起きそうな問題になろうとしている。我々人間が技術の発展をコントロールできるか、もしくは技術によって人間がコントロールされてしまうか、どちらかになる。キラーロボットの登場という潜在的なリスクに対応するためには、多国間での議論が必要だ」と語った。

「国際社会で成文化した条約や制度が必要」

 キラーロボットの問題については、国連やEUでも禁止を訴えているが、国際的なルールや制度は成立していない。2019年3月末にジュネーブで開催される特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の会議でも自律型殺傷兵器、キラーロボットについて議論が行われる予定。マース外相は「我々はキラーロボット禁止に向けて国際社会で成文化した条約や制度が必要だ。攻撃には人間の判断、関与が必要であり、人間がコントロールすべきだ」とコメント。

 人工知能(AI)の発展によって、兵器の自律化が進んでおり、キラーロボットの登場が国際社会では懸念されている。ロボットや兵器が自律化して、ロボット自身の判断で人間を攻撃してくるようになる可能性がある。ロシア、イスラエル、韓国、中国、アメリカなどは自律兵器の開発を積極的に行っており、国際社会の足並みは揃っていない。兵器の自律化に対する禁止を国際社会で一致することは容易ではない。

 ロボットが自律してロボットの判断で人間を攻撃してくるようになると、人間はロボットに殺されてしまう可能性があり、従来の人間が人間の判断で人間を殺していた戦争の在り方も変わってくる。またロボットが人間の生死を判断するという哲学、倫理的な側面からの検討も求められている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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