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南スーダン、700万人が深刻な食糧不足で飢饉のリスク

佐藤仁学術研究員・著述家
(UNICEF)

3万人が極限の食糧不足

 南スーダン政府は2019年2月、ユニセフ(国連児童基金)、FAO(国連食糧農業機関)、国連WFP(世界食糧計画)と共同して発表した総合的食料安全保障レベル分類 (Integrated Food Security Phase Classification、略称IPC)報告書によると、 深刻な食糧不足に陥っている人々の数は、2018年1月と比較して13%増加。南スーダン東部と中央部のジョングレイ州およびレイク州で、既に極限の食糧不足の状態(5段階のフェーズのうち「大惨事(フェーズ5)」)に達している3万人を含んでいる。

 報告書では、食糧不足が積み重なった紛争の影響、不十分な食糧生産高、そして住民の避難といったことにより引き起こされていることを示している。2019年の国内の穀物生産高は必要とされる量の52%しか供給できないと予測され、2018年の61%を下回る。”lean season”と呼ばれる収穫高が減る5月から7月にかけて深刻な食糧不足に陥る可能性があると警鐘を鳴らし、人道支援の規模拡大と人道支援のためのより良いアクセスを強く求めた。現在の支援レベルでは、5月から7月の間に約5万人の人々が大惨事(極限の食糧不足)に陥ることになり、人道支援が全く届かなければこの人数は26万人にものぼる可能性になると報告書は指摘。

南スーダン(UNICEF)
南スーダン(UNICEF)

紛争、天候による食糧危機、重度の栄養不良の5歳未満が約86万人

 紛争は、食糧生産を減少させ、家畜を奪い、代替食糧の入手を難しくしている。乾燥期の長期化、洪水、穀物の病気、および害虫被害が、主に雨水に依存する農業生産に深刻な打撃を与えている。貧しい人々は特に、食料価格の高騰や市場で入手できる食料の減少に喘いでいる。スーダン国内の全体的な状況が悪化し、人道支援が全く届かない状態が長期化すれば、既に食糧不足の状態が高い地域では、飢饉が起こるリスクがある。多くの地域で深刻な栄養不良が続いており、重度の栄養不良に陥っている5歳未満児の数は約86万人にのぼる。

南スーダン(UNICEF)
南スーダン(UNICEF)

 ユニセフは2019年に、200万人以上の子どもたちと彼らの母親に対して質の高い栄養サービスを提供する予定。ユニセフは微量栄養素サプリメント、保健や水と衛生サービスや、急性栄養不良を予防するための乳児への適切な栄養や衛生習慣に関するカウンセリングを提供していく。栄養サービスを必要としている子どもを早期発見し、重度の急性栄養不良の子どもたちにはすぐに口にすることができる栄養治療食(RUTF)を提供し治療していく。

 ユニセフ・南スーダン事務所代表代理アンドレア・スレイ氏は「和平プロセスの開始により、支援を必要としている人々へのアクセスが改善され、重度の栄養不良に陥っている子どもたちの治療が成果を見せており、治癒率は80%を超えています。しかし、私たちの栄養プログラムは必要な資金の88%にあたる5540万米ドルが不足しています。すぐに資金が得られなければ、私たちが助けられるはずの子どもたちが亡くなる可能性があります」と語った。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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