ホロコースト生存者、死後も3Dで対話「若い人に何があったのかを知ってもらいたい」

ホロコースト生存者のAaron Elster氏(イリノイホロコースト博物館提供)

 第二次大戦時にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を大量に虐殺したホロコースト。ホロコーストの生存者の1人でアメリカのシカゴに暮らしていたAaron Elster氏が2018年4月に85歳で亡くなった。

死後も3Dで対話できる

 Aaron Elster氏は1933年にポーランドで生まれ、両親と2人の姉妹とともに生活していた。ゲットーに押し込められた後、強制収容所へ移送されるのを免れるため、戦争が終わるまでの2年間は、ポーランド人の屋根裏に隠れて生活。子供だからこそ、当時そのように隠れて生き延びることができた。戦後、妹とともにアメリカに移住。自身のホロコーストの経験を綴った「I Still See Her Haunting Eyes: The Holocaust & a Hidden Child Named Aaron」という本も執筆している。

Aaron Elster氏の著書「I Still See Her Haunting Eyes: The Holocaust & a Hidden Child Named Aaron」(Amazon)
Aaron Elster氏の著書「I Still See Her Haunting Eyes: The Holocaust & a Hidden Child Named Aaron」(Amazon)

 Aaron Elster氏は亡くなるまで、ホロコーストの証言者として、博物館や地元の高校などで当時の様子を学生らに語っていた。ホロコーストを生き延びることができた生存者たちも高齢化が進んでいき、生存者の数も年々減少している。

 生存者らは老齢化が進み、肉体的にも対応できる人も少なくなってきている。こればかりは仕方ないことだ。そのため現在、ホロコーストの生存者らの証言をデジタル化して残していく取組が全世界で進んでいる。

 そして、Aaron Elster氏も亡くなったが、博物館を訪問する学生らの前に3Dで登場し対話している。これからも対話を続けることができる。

2000以上の質問に回答できる

 米国のイリノイホロコースト博物館では、シカゴ周辺に在住しているAaron Elster氏らホロコースト生存者13人のインタビューと撮影を行い3D化し、ホログラムで訪問者の前に登場し、訪問者の質問に回答することができる。イリノイホロコースト博物館の中の「Take a Stand Center」で2017年10月から展示している。同博物館ではホロコースト生存者らとの3Dでの対話を通じて、人種差別や偏見をなくす取組を行っている。

 ホロコースト生存者のインタビューと動く姿を撮影し、それらを3Dのホログラムで表現。博物館を訪れた人たちと対話して、ホログラムが質問者の音声を認識して、音声で回答できる3Dの開発が進んでいる。このようなホロコースト生存者の3Dでの対話システムは、米国だけでなく欧米のホロコースト博物館で進められている。

 5日間にわたって朝から晩まで撮影とインタビューを行い、「どうやってナチスの魔の手から生き延びることができたの?」や「ヒトラーには会ったことある?」といった2000以上の質問に回答ができる。目の前のホログラムのホロコースト生存者たちが、学生らの質問にリアルタイムに回答する。

「若い人に何があったのかを知ってもらいたい」

 Aaron Elster氏は昨年「若い人に当時、何があったのかを知ってもらいたい。それを伝えることは、我々生存者の役割。若者らが差別や偏見を目撃した時に、それらに立ち向かって行ってほしい。それが未来への希望につながる。ホロコースト生存者の体験は語り継がれていくことが重要」と語っていた。3Dによって、同氏が亡くなってからも、若い世代に当時のホロコーストの様子をインタラクティブな会話によって伝えている。

 イリノイホロコースト博物館のSusan Abrams氏は「従来のようにホロコースト生存者のインタビューだけを撮影した動画を見せるだけでなく、音声認識の3Dホログラムでインタラクティブに対話して、質疑応答ができる。これは今までのようなただ動画を見るだけの経験とは全く異なる」とコメント。

▼イリノイホロコースト博物館が制作したAaron Elster氏が当時の思い出を語る動画。

▼イリノイホロコースト博物館が展示しているホログラムでのホロコースト生存者との対話を紹介する動画