ブルガリアのルメン・ラデフ大統領が2018年3月、イスラエルを訪問。ネタニヤフ首相らと会談を行った。またラデフ大統領はイスラエルのベエルシェバにあるCERT(Computer Emergency Response Team)を訪問。CERTとは「コンピュータ緊急対応チーム」で、ネットワークやシステムの脆弱性の確認やサイバー攻撃の検知、対策などを行っている組織。

外国人首脳として初のイスラエルCERT訪問

 海外の首脳でイスラエルのCERTを訪問したのは、ブルガリアのラデフ大統領が初めてとなる。イスラエルの国家サイバー総局のトップを務めるYigal Unna氏がブルガリア大統領らを案内し、イスラエルがどのようにサイバー攻撃の脅威に対応し、各機関とどのような連携を行っているのかを説明した。またブルガリア大統領はベエルシェバのCyber Parkも訪問。ここにはサイバーセキュリティ関連企業が20社あり、地元のネゲヴ・ベングリオン大学やCERTと協力して研究開発を行っている。

 そして、今回のイスラエル訪問で、ブルガリアとイスラエルの間でサイバーセキュリティ領域で協力をしていくことを合意した。イスラエルは周辺諸国から常にサイバー攻撃の脅威に晒されている。そのため、サイバーセキュリティに関する技術は世界最高クラスだ。サイバーセキュリティ関連の多くのスタートアップもあり、イスラエル軍の精鋭部隊で、サイバー諜報活動やサイバー攻撃・防衛を担っている8200部隊出身者らが多く働いている。

 ネタニヤフ首相はブルガリアとのサイバーセキュリティでの協力について「イスラエルはサイバーセキュリティ分野だけでなく、あらゆる科学技術で世界トップレベルの研究と技術力を有している。我々の友人であるブルガリアには喜んで、これらの技術を共有していきたい。我々イスラエルとブルガリアは、昔も今も、そして将来にわたっても友人だ」とブルガリに対する惜しみない協力を提供していく意思を表していた。

「ユダヤ人は75年前のソフィアを決して忘れない」

 CERTはイスラエルのサイバースペース防衛の拠点のような施設だ。イスラエルにとってサイバースペースは領土と同じくらい重要である。社会生活、経済インフラ、安全保障施設のあらゆるものがサイバースペースに依拠するようになった現在、サイバースペースの防衛は国家の防衛と同じだ。その重要な拠点であるイスラエルのCERT施設を外国人の首脳として初めて訪問することを許されたブルガリアの大統領。どうしてここまでブルガリア大統領はイスラエルに歓待されているのかと疑問に思う人も多いかもしれない。

 2018年3月23日に行われたラデフ大統領との共同記者会見で、ネタニヤフ首相は以下のように述べていた。「我々ユダヤ人は75年前のことを決して忘れない。ブルガリアのソフィア駅で、ナチスドイツから迫害されていたユダヤ人たちに対して模範的な行動に出てくれたブルガリアの人々のことを。また、ラデフ大統領の反ユダヤ主義反対に対する強い姿勢に敬意を表します。まさにブルガリアは真の友人だ」

 ナチスが欧州でユダヤ人を殺害していた第2次大戦中。ブルガリアでは、実は早い時期から反ユダヤ措置によってブルガリアのユダヤ人の公民権は剥奪されていた。しかし、同盟国のドイツが、ブルガリアのユダヤ人をアウシュビッツなど強制収容所へ移送することを要求してくると、ブルガリア議会とブルガリア国民は抗議の声をあげて、ナチスに徹底的に抵抗を繰り広げた。そして、ついにブルガリアのユダヤ人たちはナチスに殺害されることを免れた。(但し、戦時中にブルガリアが占領していたギリシャとマケドニアのユダヤ人約1万人をトレブリンカ収容所に送ることには同意させられた)

 ラデフ大統領は「ブルガリアへの暖かいお言葉、ありがとうございます。75年前のブルガリア人とユダヤ人の関係が、現在でも両国の関係を強く結びつけていることが喜ばしい。イスラエルの社会建設、サイバーセキュリティをはじめとした科学技術や教育水準の高さには強い関心を持った。イスラエルの科学技術は明らかに発展しており、未来を見るようなものだった」とコメント。

▼イスラエルで行われたネタニヤフ・イスラエル首相とラデフ・ブルガリア大統領の共同記者会見(Israel Prime Minister office)