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五輪フィギュアスケート、ドイツ選手が映画『シンドラーのリスト』の音楽で披露:欧米ではネット炎上

佐藤仁学術研究員・著述家
フィギュアスケートでドイツのニコル・ショット選手(写真:ロイター/アフロ)

ドイツ選手が利用ということでまだ続きそうなネット炎上

 平昌冬季オリンピックのフィギュアスケートでドイツのニコル・ショット選手が映画「シンドラーのリスト」の音楽に合わせて演技を披露していた。 そのことで欧米では、ツイッターなどのソーシャルメディア(SNS)では「誰も『シンドラーのリスト』の音楽で踊るべきではない」、「この曲でスケートをするのは信じられない」、「ドイツ人なのに本気なのか?」といったコメントで大炎上している。欧米のニュースでもこの話題が多く報じられている。ニコル・ショット選手は楽曲の選曲について、現時点ではコメントしていないようだ。

 「シンドラーのリスト」は1993年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督による映画。第二次世界大戦時にドイツによるユダヤ人の虐殺、いわゆるホロコーストの時代に、ユダヤ人を軍需工場で働かせることによって、約1200人のユダヤ人の命を救ったドイツ人実業家オスカー・シンドラーを描いた内容。 シンドラーはナチスがユダヤ人に課した「強制労働」によって、ユダヤ人を救った。だが、映画の中にはユダヤ人迫害や強制収容所での残虐なシーンもあるように、ホロコーストでは約600万人以上のユダヤ人が殺害された。 スピルバーグ監督もユダヤ系アメリカ人。

話題作りにはなるが、リスクが高すぎる

 そのため「ホロコーストを扱った映画の音楽でフィギュア・スケートを演じることは不謹慎だ」ということでネットが炎上している。「シンドラーのリスト」の音楽がスケートで利用されるのは初めてではないようだが、今回は加害者の国であるドイツ選手が使用していることから、炎上は当面は続きそうだ。

 2016年11月には、ロシアの国営テレビ・チャンネル1の番組「Ice Age」で放送されたフィギュアスケートで、元ロシアのスケート選手がナチス時代のホロコーストの囚人服の衣装を着て、1997年に公開されたホロコーストを扱った映画で日本でも人気があった『ライフ・イズ・ビューティフル』のテーマ曲「Beautiful that Way」でスケートを披露したことがあった。この時も欧米を中心にネットやSNSが大炎上していた。

 ホロコースト関連のテーマ曲などをスポーツやエンターテイメントに用いると、SNSやネットが大炎上することは欧米諸国の人なら想像できたことだろう。話題作りにはなるが、リスクが高すぎる。

▼映画「シンドラーのリスト」の1シーン(Movie CLIPより)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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