オランダ:H&Mの人種差別広告を真似したアンネフランクの画像、SNS大炎上
H&Mの人種差別広告で世界中でSNS炎上
アパレルメーカーのH&Mが2018年1月に「Coolest Monkey In The Jungle(ジャングルで最もクールな猿)」とプリントされたパーカーを黒人少年が着用している広告を掲載し、人種差別との批判が殺到していた。世界中のSNSでも非難が殺到し、大炎上となるだけでなく、2018年1月13日には、南アフリカのヨハネスブルグのH&M店舗に抗議する人々が押しかけ、店舗を荒らしたり商品略奪まで発展した。本件はH&Mが謝罪。このニュースは日本でも大きく報じられていた。
H&Mの人種差別広告を真似したアンネフランク
そしてH&Mの人種差別広告の真似をしたアンネフランクの画像がオランダのサイトDumpertに掲載されて、オランダではSNSが大炎上している。オランダのサイトのため、オランダ人以外のアクセスは多くないようだが、アンネフランクがパーカーを着ており、そのパーカーには「Coolest Jew in the Shower Room(ガス室で最もクールなユダヤ人)」と書かれている。収容所に到着すると「シャワーを浴びる」と騙されて、働くことができない老人や子供たちはガス室で殺害された。アンネフランクはガス室で殺害されていない。
デジタル空間で変わりつつあるアンネフランクのイメージ
アンネフランクはオランダがナチスドイツに占領された、いわゆるホロコースト時代に、ユダヤ人迫害を避けるためにアムステルダムの隠れ家に身を潜めていた。その後、隠れ家が発覚されてしまい、ベルゲンベルゼン収容所で死亡している。「アンネの日記」は日本人でも知っている。
まさにアンネフランクがいたオランダのサイトで、アンネフランクを誹謗するような画像が掲載されたことから、驚いているオランダ人も多い。現在ではサイトから画像は削除されている。
アンネフランクは、世界中でもホロコーストを象徴するような存在だ。だが、当時の生存者や当事者も年々減少しており、ホロコースト時代の表象(イメージ)は変わりつつある。特にデジタル空間におけるホロコーストの表象を研究していると、SNSやネットでは「ホロコーストの象徴で、世界的にも有名なアンネフランク」は英雄("ヒロイン")や格好良い("クール")存在で扱われていることが目立つ。
日本では小説のみだが、欧米ではアンネフランクを主人公にしたアニメやドラマ、舞台などの視覚から入るイメージの影響も大きい。さらに反ヘイトスピーチの活動に用いられることも多く、その姿は「悪の権化ナチスにペン1本で立ち向かった少女」のように描かれることもある。このようにデジタル空間でのアンネフランクの表象(イメージ)も変容してきている。
そのため「Coolest Jew in the Shower Room(ガス室で最もクールなユダヤ人)」と書いてしまうのかどうかは不明だが、H&Mの人種差別広告での炎上を見て、アンネフランクの画像が炎上することを想像することはできなかったのだろうか。