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ネット通販で「アンネフランクのハロウィン衣装」批判が相次ぎ販売停止

佐藤仁学術研究員・著述家

「ハロウィンで、第二次大戦のヒロインになろう」

 ナチス時代にユダヤ人であったためにオランダのアムステルダムの隠れ家で生活しており、最後は発覚されて収容所で死亡したアンネフランク。「アンネの日記」は世界中で読み継がれており、映画や舞台でも上演されていることから世界中の人が知っている。そのため多くの人がアンネフランクの衣装がどのようなものかもイメージできる。

 そのアンネフランクと思わせる衣装がハロウィン向けに、ネットで販売されていた。Amazon.comの他、Walmart.com、TheHalloweenSpot.com、ziggosparty.com、eBayなど代表的なネット通販サイトで販売されていた。タイトルも「第2次大戦時の避難民の少女のコスチューム(World War II Evacuee Girl Costume)」と、明らかにアンネフランクを想定しているサイトもあった。1着2,500円程度で、青い服と緑のベレー帽のセット。「ハロウィンで、第二次大戦のヒロインになろう」という広告も出ていたようだ。

SNSなどネットで大炎上して販売停止へ

 最近では日本でもハロウィンで仮装している人々が多いが、欧米では多くの人が様々なコスチュームに身を包んでハロウィンを楽しんでいる。1夜限りのコスチュームだから、使い捨てのようなもので決して高くない。欧米のネット通販各社にとっては、ハロウィンのコスチュームは毎年、重要な収入源だ。衣装を着用するのは、ほとんどが子供だから、毎年成長することから去年と同じ衣装は着ない。そのためハロウィンの衣装は毎年、相当販売される。少しでも奇をてらったコスチュームを販売して売上につなげたい。

 その中でアンネフランクと思わせる衣装も販売されており、「アンネフランクや殺害されたユダヤ人の冒涜」などSNSやネットで炎上していた。また、反ユダヤ主義を監視する団体(Anti-Defamation League)も「ホロコーストの犠牲者や家族に対しての思慮に欠ける」と批判。あまりにもネットで炎上したこともあって、多くのネット通販で衣装の販売を停止した。販売していたHalloweenCostumes.comは「学生コスチュームと同じ位置づけで販売していた。謝罪する」とスポークスマンがコメント。

 日本でも昨年末にアイドルグループの欅坂46がナチスドイツの軍服に似ている衣装を着ていたため、反ユダヤ主義を監視している団体サイモン・ヴィーゼンタール・センターからの抗議を受けて、即座に謝罪するという事件があった。アンネフランクを想起させるハロウィン衣装がどのような結果を招くのか、想像できなかったのだろうか。

「超かっこ悪い(super uncool)」と評されたツイート。ネットでも大炎上していた。

「こんなコスチューム出ているけど知ってる?」とアンネフランクセンターへのツイートも。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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