アンネフランク一家を密告したのは誰か:人工知能を活用して解明へ
戦時中にナチスドイツがユダヤ人を600万人以上虐殺したホロコースト。その犠牲者の一人として世界で一番有名なのがアンネフランクだ。ナチスに占領されたオランダのアムステルダムで隠れ家に約2年間潜んで、そこでの生活や思いを記した「アンネの日記」は現在でも世界中で読み継がれている。
アンネは1944年8月4日に、隠れ家が発見されてしまい、収容所に連行されて15歳で死亡した。隠れ家が発覚したのは密告説が濃厚だが、誰がアンネフランク一家を密告したのかは、今までにも多くの調査や研究が行われてきたが、未だに不明なままだ。
当時の目撃者はいなくなり、莫大な情報を元に解明へ
そこで2017年10月に、米国連邦捜査局(FBI)元捜査官のVincent Pankoke氏らが、アンネフランク一家がどのようにして発覚されたのかを解明するプロジェクト「A cold case diary」を立ち上げた。このプロジェクトには元捜査官の他にも歴史家や犯罪学の専門家、人工知能(AI)のデータサイエンティストなど約20人が参加している。
このプロジェクトではアンネフランクや当時のオランダやアムステルダムの文書、警察の記録、ナチス協力者のリスト、フランク一家の周辺の情報や莫大なデータを集積し、それらのデータから人工知能で解析していこうとしている。なぜなら「フランク一家が連行されてから70年以上が経ち、当時のことを証言できる人、目撃した人はほとんど死亡している」とPankoke氏は語っている。また同氏は「入手可能なあらゆる情報を探っている。どのような小さな情報やデータでも収集している。その中には今まで知らなかったような情報もある」とコメント。人工知能の強化には情報やデータの量が重要だ。
フランク一家が逮捕されて75周年となる2019年までに解明したいとのことだ。このプロジェクトに係る費用は500万ドル(約6億円)で、クラウドファンディングを活用して世界中から資金を集める。当時の大量の情報のデータ解析にはオランダの企業Xomniaが協力する。専用のソフトウェアで大量のデータ解析や視覚化を行い、密告の容疑者の絞り込みを行っていく。過去の調査では容疑者は30人いるそうだ。当時、ユダヤ人潜伏を通告した報酬は1人につきソーセージ1本、酒3分の1本と25ギルダーのお金だった。なお密告の容疑だけでなく、偶然発覚されてしまったという説もある。調査の様子はネットで公開していく予定。
真相がいまでも不明なことから「第二次大戦最大の謎」とも言われている。莫大な当時のデータや情報を元にした人工知能は、その謎を解明することができるのだろうか。
▼アンネフランク一家を密告したのは誰かの調査を伝えるニュース動画(英語)
▼世界中から観光客が訪れる「アンネの家」では、アンネの生涯を短いアニメでも紹介している。