Apple、インドで「iPhone SE」製造開始・販売へ:それでもインドのスマホ平均価格の2倍以上
インドでもiPhoneは販売されていたが、AppleがついにインドでiPhoneの製造を開始することが明らかにされた。Appleの委託先の台湾のメーカーWistronがインド南部のバンガロールの工場で「iPhone SE」の組み立てに向けた準備が完了したとのこと。
インドで出荷されるスマホの半数以上が中国メーカー
インドのスマホ市場では圧倒的にサムスンが強い。安い端末から高い端末まで多くのラインナップを揃えている。IDCインドによると、サムスンのインドでのシェアも28.1%で1位だ。そしてXiaomi(中国)14.2%、vivo(中国)10.5%、Lenovo(中国)9.5%、OPPO(中国)9.3%と上位5社のうち4社が中国メーカーで占めており、中国メーカーが過半数を占める市場だ。かつてはインドの地場メーカーのMicromaxやJioなどの名前が挙がっていたが、上位から名前を消してしまった。インドメーカーが衰退したのではなく、中国メーカーが急速に台頭してきた。特にOPPO、vivoの中国メーカー2社の台頭はインドだけでなく、東南アジアや中国市場など世界規模で著しい。
インドで販売される新品スマホの平均価格は155ドル
またインドでの新品のスマホの平均価格は155ドル(約17,000円)。それでも昨年の131ドル(約14,000円)よりは高くなっている。現在でも多くのスマホが新品でも100ドル以下で大量に販売されており、人気がある。インドでは現在でも「iPhone SE」は320ドルで販売されている。このような廉価な端末が売れ筋のインドで「iPhone SE」の320ドル(約35,000円)でも平均価格の2倍以上。まして10万円以上の最新版のiPhone 7などは一般市民にとっては簡単に購入できるものではない。
インド政府もモディ首相の主導で「Make in India」を提唱しており、あらゆる業界のメーカーに対してインド国内での製造を呼び掛けている。中国市場で売上を落としているAppleとしては、インド市場は重要だ。「アメリカ・ファースト」を呼び掛けるトランプ政権になる前からAppleは中国やインドでの製造を推進してきた。
CNNでは「長い間、待った。ついにAppleがインドで製造されたiPhoneを販売する(After a long wait, Apple is about to start selling iPhones made in India)」と報じていたが、Apple自身は「長い間、待っていた」かもしれないが、インド人の消費者はどのくらい待っていたのだろうか。インドでもたしかにiPhoneは人気だが、実利主義的なインド人にとっては高価なiPhoneよりも、安くて品質の高いスマホが受け入れられやすい。それでもインドには12億人以上の人口がいるからiPhoneを購入できる富裕層でも相当なものだ。だがインドで製造しても劇的に端末価格が安くならないと一般市民にまでは普及しないだろう。インドでのiPhone製造はAppleのインド市場での販売増につながるのだろうか。
▼地域別での売上高とシェアの推移(2017年Q2)
インドが属する「その他のアジア太平洋」地域の売上は2017年Q2(2017年1月~3月)では前年同期で20%増。前期(2017年Q1:2016年10月~12月)と比較すると売上が35%減だが、この時期はクリスマスシーズンなので各国で売上好調。
クックCEOは、2016年10月にはインドのヒンドゥー教の新年のお祝いディーワーリーにもメッセージを寄せている。この時期はインドでセール好調のシーズン。人口12億人以上をかかえる同国はAppleにとっても重要な市場の1つだ。
インドでのiPhone 6のCM。中国メーカーや地場メーカーの廉価な端末が主流のインドではiPhoneは高級品で富裕層しか購入できない。