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Uber、サンフランシスコで自動運転タクシーの実験開始:ドライバー不要の時代へ

佐藤仁学術研究員・著述家

Uberは2016年12月からサンフランシスコで自動運転タクシーの実験を開始した。Uberは2016年9月にピッツバーグで自動運転車の路上での走行を行った。スマホのアプリで自動運転タクシーを呼んで乗車する。ボルボと提携して開発された自動運転車「uberX」が目的地まで連れて行ってくれる。まだ実験なので運転手が同乗しているが、ハンドルを触っていない。ピッツバーグでは変わりやすい天候の地域での運転経験を積んで、サンフランシスコではバイクが多い道路や交通渋滞、狭い道路での運転経験を積むことができるとのこと。

まだ州の規制当局と自動運転車の走行許可についての問題が残っているようだが、自動運転タクシー実現に向けて大きな一歩を踏み出した。動画も公開しているので、以下に紹介しておく。

自動車は保有しない時代へ

規制の問題は時間をかけて解決していくしかないだろうが、技術の進歩は速い。Uberはピッツバーグで自動運転車の走行試験を行った2016年9月には「自動運転車が社会に普及することによって、年間1,300万件にも及ぶ交通事故数の低減や、現在都市の面積の20%にも及ぶ10億台以上分駐車スペースの解放、年間1 兆時間もの無駄に繋がっている渋滞の緩和に繋がる」と述べていた。

現在はまだ試験走行なので運転手が同乗しているが、規制問題が解決して技術が進歩したら自動運転タクシーにドライバーも不要になるだろう。そして自分で自動車を所有して、自分で運転する必要はなくなる。必要な時に自動運転タクシーを呼んで低価格で目的地に行けるようになる。

自動車を所有することはコストがかかるし、運転はとても疲れるが、自動運転タクシーであれば疲れていても寝ているうちに目的地まで運んでくれる。また今までのタクシーや物流はドライバーが運転していたから、人件費がかかっている。夜だからタクシーが高いということもなくなるだろう。自動運転タクシーが普及するようになって、ドライバーの人件費がかからなくなるとタクシーも低価格で気軽に呼べるようになる。また大量に24時間いつでも配送できるようになるから物流コストも安くなるので、食料品や日用品の値段も安くなるだろう。

変わる社会と産業構造

自動運転車の普及によって、ドライバーの仕事が激減する。そうなると今までのように深夜にトラックの運転手向けにサービスを提供していた食堂やショップなどでも姿を消すだろう。個人で自動車の免許を取る人も少なくなるだろうから、自動車学校も淘汰されていくだろう。Uberのような自動運転車による配車が低価格で普及したら、地方でも個人で自動車を所有する必要もなくなってくる。メーカーや保険会社も、いつまでも個人の自動車購入者に依拠することはできなくなる。

かつて20世紀初頭に自動車が登場した時には、今まで馬車の運転手(御者)や馬車を造っていた人、馬の世話をしていた人は自動車に仕事を奪われた。その代りに自動車が新たに石油産業や鉄鋼、道路建設、運転手といった仕事を多く生み出し、産業構造と社会は大きく変化した。自動運転車の実用化と普及は、それと同じくらいの雇用と社会構造に与えるインパクトがある。

このような産業構造と雇用の変化はアメリカだけでなく、日本や全世界でも同じような社会がやってくる。時代の流れは止めることはできない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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