ユニバーサルデザイン視点で見える近未来スポーツ。

車椅子もスポーツで輝くツール。(写真:アフロ)

パラリンピック競技は超人のものでありつつ、みんなのスポーツ。

リオオリンピックはたくさんの感動と連帯感を産み出して閉幕。続いてパラリンピックが9/7~18、開催されます。大会と競技への理解もかなり広がり、TV放送も充実しています。日本時間で9/8早朝6時の開会式から9/19午前8時過ぎの閉会式まで。NHKはもちろん民放も連日報道し、スカパー!では期間中毎日24時間放送体制の専門チャンネルを開設します。

NHKリオパラリンピックウェブサイト

スカパー!リオパラリンピック番組編成表

1998年の冬期長野パラリンピックから本格的報道を始めて、地道に存在価値を高めてきた関係者の努力の成果です。そして競技そのものも観る価値にあふれた素晴らしい競技ばかり。障害を乗り越えて頑張っている人たちの競技会という狭量な視点を覆してしまいます。磨き上げた技量、頭脳プレー、連帯さらに最先端技術の補助器具導入など、オリンピックにはない魅力。それはまさに超人の世界です。

観て楽しめるスポーツに育ってくるにつれて、観る楽しみからやる楽しみに入るひとも増えてきました。わたくしが12年前に車椅子バスケットボールの体験をしたいと発言した時には、周りから信じられないという眼で見られたのですが、その後しばらくして身障者スポーツセンターでの一般参加体験会が当たり前のように開かれるようなっています。

車椅子バスケ体験会 多摩障害者スポーツセンターでは定期的に開催
車椅子バスケ体験会 多摩障害者スポーツセンターでは定期的に開催

たとえば視覚障害スポーツ競技においては、晴眼者がアイマスクをして競技会に出ることも珍しくありません。やって分かることは純粋に楽しい!ということです。

世界的スポーツの代名詞であるサッカー自体が手を使えないという制限のあるスポーツです。手を使えないからこその面白さとダイナミックさ、緊張感がサッカーの魅力です。ここに視覚の制限を加えればブラインドサッカーに。パラリンピックでは5人制サッカーと区分されます。ドリブル、意外性のあるシュート、チームプレー、サインプレーまで見えないからこその優れたスポーツらしさが創造されました。ブラインドサッカーは団体運営の優れた手腕に加えて昨年渋谷で開催したW杯によって日本のパラスポーツを代表する団体になりました。残念ながらリオ出場権を逃しましたが、東京大会では大活躍してくれることでしょう。活躍とともに日本ブラインドサッカー協会では大会での併催イベントやワークショップで体験会を積極的に開催。人気のイベントになっています。見えない体験が、見えないことを超えて能力開発体験になろうとしています。

2016日本選手権より 提供:日本ブラインドサッカー協会
2016日本選手権より 提供:日本ブラインドサッカー協会

日本ブラインドサッカー協会

体験にとどまらない新しいスポーツづくりへ

ワークショップ「OFF TIME」の体験光景 提供:日本ブラインドサッカー協会
ワークショップ「OFF TIME」の体験光景 提供:日本ブラインドサッカー協会

体験してみると、たくさんの新発見があります。アイマスクをして歩く、走る、ボールを操るそしてチームで連携する。今までにない脳の使い方を実感します。その時の脳は見えない空間の把握や予測に異常なほどの高まりのデータを示します。体験後には大きな疲労感とともに脳の活性による気分の高揚を感じることがわかります。体験者の明るい笑顔と饒舌さがそれを示しています。車椅子競技の場合も同様です。下肢の代わりではなくて別物だと感じるのです。視界の違い、操作することと動くことの連携。さらに球技になればボールを放つための技術。わたくしが体験してまず思ったのは、自分用にカスタマイズしたものが欲しい! 自転車、特にロードレーサーを趣味にする方はお分かりでしょうが、自分の体格に合わせて微妙にパーツを組み替えることが能力の最大化に重要です。たまたま乗ったものがかなりフィットし、信じられない動きで開放感も感じました。実際に選手はツールをカスタマイズし、自転車同様、いやそれ以上にかなりの費用がかかります。それは義足においても悩ましいものであり、年間の経費は自家用車を毎年買い替えるくらいにもなるのです。障害者補償が受けられるのは生活するための標準的なもの。それ以上のツールは自己負担もしくは民間支援なのです。日本には優れた機器を造る技術者が、要望に応えて真摯に製造に取り組んでいます。それを支える理解と支援が必要だということも体験によって実感出来ます。

体験すると最も実感するのは、意志を伝えあう技術、思いはかる能力の拡張です。そこに着目して様々なゲーム種目が開発されています。体力や感覚にあわせて楽しめるペタンクを活用しているのがユニバーサル・イベント協会。9月開催のユニバーサルキャンプin八丈島でも誰でもが一緒に楽しむための重要なコンテンツになっています。

競技者がコラボする取り組みも始まっています。2本の回転する縄をチームで跳ぶダブルダッチ。2013世界チャンピオンチームCracker Jackの中心メンバーと2010バンクーバーオリンピック銀メダリストのアイススレッジホッケー上原大祐選手はTeamAAAを結成。車椅子でのダブルダッチ・パフォーマンスを展開しています。ダブルダッチというマイナースポーツのPRと楽しむ可能性を見せてくれます。

組織的な取り組みも活発化。みんなでみんなのスポーツを考えようと呼びかけて始まったのが、みんスポ・ソーシャルドリンクス。カテゴリーや既成概念を超えたソーシャルなスポーツについて話し合い、チャレンジする人々をネットワークしています。みんスポ・ソーシャルドリンクスFACEBOOK

実際に様々な競技を産み出しているのが、世界ゆるスポーツ協会。スポーツ弱者をなくそうをテーマに産み出されている競技は、奇想天外かつ成長の期待大。例えば音の出るボール。揺らすと鈴の音ではなく、赤ちゃんの泣き声なのです。静かに運ばないと大変…などという実にユニークで楽しいルールとスキルのゲームが出来ていくのです。

ゆるスポーツのひとつ ベビーバスケ
ゆるスポーツのひとつ ベビーバスケ
ゆるスポーツのひとつIMOMUSHI RUGBY
ゆるスポーツのひとつIMOMUSHI RUGBY

世界ゆるスポーツ協会

デジタル時代のスポーツ文化と人間力

デジタルメディアの興隆により、ここまで紹介したような流れを多くの人に共有できるようになっています。これはパラスポーツに限らず、前述のダブルダッチのようなマイナースポーツ、危険とスリルが魅力のエクストリーム・スポーツも存在の輝きを増しています。それはゲーム機世代も巻き込んでゲームのスポーツ化へも進行中です。昨年設立された日本eスポーツ協会は世界的な競技会を主催。世界のゲーム人口から見て近未来のオリンピック種目入りも夢ではないでしょう。一般社団法人 日本eスポーツ協会

スポーツの可能性を拡げたデジタルコミュニケーションをより人肌かつ思いやることの重要性にも活用していくことがより高い目標だと思います。

この9月から東京都教育委員会ではオリンピック・パラリンピック教育推進支援事業として教育支援プログラムを開始します。今年度から開始した都内全公立学校でのオリパラ教育における体験学習形式のプログラムです。オリパラさらに障害者、支援者、国際分野支援等関連団体・機関の講師、校外学習、提供教材が38テーマ揃っています。2017年までに理解促進教育。2019年までに理解・交流そしてボランティア活動等取り組みの活発化。2020年オリパラ開催時には実施そのものに貢献するピークを迎え、培われたノウハウ、ネットワークをその後も活用していく計画です。東京都オリンピック・パラリンピック教育

この子供たちはデジタルネイティブであり、ユニバーサルデザインネイティブとして日本の未来を創造していくことでしょう。

調布市では障害者理解を促進するイベント「Think Handicap」を10/2(日曜日)の午後に開催します。一般の方にも楽しみつつ、理解し連携していただけるような3つの体験型プログラムにはだれもが楽しめるボールゲーム「パラディスボール」やダンス体験などが組まれています。体験して知り、親しんでいくことで人間力を高めるイベントになりそうです。Think Handicapイベント案内

パラディスボールは楽しさと新鮮な体験が魅力のゲームです。写真提供:PARADIS
パラディスボールは楽しさと新鮮な体験が魅力のゲームです。写真提供:PARADIS

スポーツをユニバーサルデザインが高める意義は何か

再びリオパラリンピックに戻ってみましょう。どうやら現地では会場や設備の縮小などという後ろ向きな動きもあるとのことです。それはに年前の冬期ソチ大会でも若干ありました。しかし実際に開会し、終わってみればオリンピックの感動を超えるような、いやオリンピックは前座だというような感動体験が現地を包みました。きっと今回もやってみて知る素晴らしさを関係する全員が持ち帰ることと思います。感動を届けてくれる報道の方々はそれを深く理解した最大の支援者です。2000年シドニーパラリンピックから撮影配信続けるカンパラプレスの越智貴雄さんはパラスポーツを常に熱いショットで見せてくれます。越智さんはパラリンピアンの美しさにも心動かされ、障害のあるなしに関わらず自分の可能性を追求する姿も追い求めています。その一つのプロジェクトが「切断ヴィーナス」。2014年に写真展、写真集出版さらにヴィーナスたちによるファッションショーを開始。美しいイベントは企業協賛も得て継続、進化しています。無理して頑張っている人たちというような無理解を、本物の美しさを見せることで個性豊かなことは美しいという理解に変化させてきました。

2015切断ヴィーナスファッションショー@パシフィコ横浜

パラスポーツ配信サイト カンパラプレス

障害という特性をマイナスではなく個性として捉えるようになることで、スポーツをはじめとして様々な可能性が見えてきます。自動車の開発ではすでに視覚障害者に車内環境を体験評価してもらい、ともに開発に取り組む試みが進んでいます。自動運転が実現した今、だれもが移動する喜びを得られるように。障害でなくとも様々な理由でクルマが苦手な多数の人にとっての快適なクルマづくりを考えることは次世代の開発につながるはずです。つまりメジャーな人々を調査して進む社会が、マイナーな集団を束ねて経済・開発に活かすマーケティングに換える時代になるのです。スポーツは競技つまりゲームであり最高の遊びです。でもだからこそ人は熱中し、感動し、社会という連携の本質をスポーツから学びます。パラスポーツはユニバーサルデザインそのものであり、人という知、体、心そして連携によって成り立つ存在の素晴らしさを輝かせてくれます。豊かな社会は豊かなスポーツから。

原点回帰でまとめます。「まずは知ることから始めよう。前向きに生きる存在に感動しよう。」

リオパラリンピックいよいよです。

ミスターパラリンピック ハインツ・フライ選手の力走 提供:カンパラプレス
ミスターパラリンピック ハインツ・フライ選手の力走 提供:カンパラプレス