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高プロは欠陥制度なので撤回した方がいい。

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長
労働者はロボットじゃないから1日24時間も働けません。(提供:アフロ)

23日に衆院通過か?

 いよいよ5月23日に高度プロフェッショナル制度(高プロ)を含んだ「働き方改革」関連法案が衆院を通過しそうです。

 安倍総理が来週末に外遊を入れたらしく、それまでに衆院を通過させないと、今国会での成立が絶望的になるため、政府・与党は23日の採決に強い意欲を持っていると言います。

加藤大臣のウソ答弁とその後

 そうした状況にあるからか、厚労大臣の答弁もかなりテキトーになっており、平気でウソの答弁をしています。

 そのことについては、先日、下記記事で書きました。

加藤厚労相が<ウソの答弁>をしたようです。

 これについて、国会でも追及があったようです。

 それについての報道がこちら。

高プロ、省令で歯止め 加藤厚労相

 この記事だとよく分からないのですが、以下の澤路記者のツイートで当時のやり取りが分かります。

 岡本議員(国民民主党)、私の記事を見たわけではないでしょうが、的確に問題点をついた質問をしてくれる議員がいるということはありがたいことです。

 で、加藤大臣の答弁が以下の「」内です・・・。

 省令

 省令など? 

 結局、法案には加藤大臣が答弁した「労働者が働く時間帯を決める」という要件がないことを受け入れざるを得ず、でも言っちゃったもんだから、「省令で」やるという苦しい答弁をしたようです。

 しかし、高プロの効果発生のための要件を省令に定めるというのは、さすがにおかしいと思います。

 仮にそうした要件を入れるのであれば法律に書き込むべきです。

 省令は大臣が定めるもので、当然ですが、国会で決める法律より劣るものです。

 しかも、法律の成立前にはその省令の内容が分からないので、詳細を国会の場で議論しようがないのです。

 ですので、やはり、省令ではなく、法律で定めるべきだろうと思います。

高プロに潜む恐ろしい危険

 従前から指摘してきたとおり、高プロには重大なエラーがあります。

 それは、所定労働時間を設定して、その労働時間働けない場合に欠勤控除するというやり方です。

 この設定される所定労働時間には労働時間規制が及ばないのです。

 そのため、これを最大限にやると、年収357万円くらいの労働者でも高プロを適用できることになります。

 詳しくはこの記事をご覧下さい。

 仮に省令で「労働者が働く時間帯を決める」という要件を入れたとしても、このエラーに対してどこまで効果があるでしょうか?

 高プロは、使用者に課せられた労働時間の規制を外す制度です。

 24時間を所定労働時間として設定させようとする使用者の行為は違法にはなりません

 ですので、それを求めること自体を誰も責められません。

 そして、使用者と労働者との力関係を考えれば、使用者の求める所定労働時間について、労働者の同意を取り付けることなど造作もないことでしょう。

 ここまで、加藤大臣の答弁がひどいのもあり、議論があまりに雑過ぎて、深まっていないと思います。

 したがって、まずはこのエラーを完全に取り除く議論をすべきでしょう。

 そのためには、いったん、高プロだけ撤回して議論し直すべきです。

 高プロは、そこまで成立を急ぐ必要のある制度ではないと思います。

強行採決に反対するネット署名が行われているようなので、紹介しておきます。

過労死を助長する高度プロフェッショナル制度の強行採決を阻止しよう!!

「高プロ廃案」求める緊急署名をスタートしました。賛同・拡散を大至急お願いします!

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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