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「残業代ゼロ」法案、廃案!~2015年法案~

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長
(写真:つのだよしお/アフロ)

ついに衆議院が解散されました。

その後、民進党が希望の党へ合流しようと事実上の解党状態となったり、小池都知事(希望の党代表)がリベラルな民進党議員は「排除いたします」と述べたりと、バタバタが続いています。

「リベラル派は排除する」希望・小池百合子代表が明言

事実上解党の民進、希望の党は合流組をランク分けし選別

この解散の陰で、2015年に上程されていた「残業代ゼロ」法案は廃案になりました。

解散で66法案が廃案

上記の記事には書かれていませんが、この66本の法案の中には「労働基準法の一部を改正する法律案」が含まれています。

これは、衆議院のホームページを見ると分かります。

同法案が提出されたのは第189回国会でした。

これは2015年1月に召集された通常国会です。

しかし、同法案は、高度プロフェッショナル制度という労働時間規制の適用除外となる制度や、裁量労働制の拡大という「定額働かせ放題」を可能にする制度が含まれており、労働者の長時間労働を誘発するおそれのあるものとして、労働者や労働組合から非常に強い批判を受けている法案でした。

そのため、同法案は、後に選挙を控えた国会では審議するのが躊躇われたり、会期的に審議時間が十分に取れない国会では審議入りできないという事情もあって、一度も審議入りされることはありませんでした

そして、この度の衆議院の解散に伴って審議未了のまま廃案となったのです。

(※衆議院を解散すると、審議未了の法案は全て廃案になります。)

ところで、安倍政権においては、「働き方改革関連法案」が準備されています。

その中には、この度廃案となった「残業代ゼロ」法案とほぼ同じ内容のものが含まれています

ですので、安倍政権が選挙で勝利すれば、「残業代ゼロ」法案は、「働き方改革」という衣をまとって再提出されることは間違いないでしょう。

今は、政治ニュースは、政局一色になっています。

たしかに、どういう政党配置になるかは大事な問題です。

しかし、本当に大事なのは、政党がやりたいこと、政策のはずです。

ひと段落したら、政策に着目した落ち着いた報道が見たいものです。

ちなみに、今、労働に関して政策を持っているのは、自民・公明の与党は当然として、共産、社民、維新くらいでしょう。

野党第一党である民進党は、残念ながら衆院選の届け出政党にはならないそうですので、横に置くしかないですね。

そして、話題の希望の党は、全く中身が見えません。

まだ選挙まで日数があります。

雇用問題は最も身近な問題です。

各政党による中身のある論戦を期待します。

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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