ブラックバイトにご用心!!~具体例に見るその手口
卒業シーズンですね。その後、入学シーズンが来るわけですね。それが時の流れ。
というわけで、入学したらアルバイトをしようと思っている学生さんも多いと思います。
ただ、ブラックバイトにはご用心です。
ブラックバイトとは何か、また、その発生する背景については、ブラック企業対策プロジェクトの説明(「ブラックバイトとは?」)をご覧下さい。言葉の生みの親は大内裕和教授です。
また、アルバイトを始める場合の注意については、次の上西充子教授の最新記事(「新入生向けにアルバイト就労にあたっての注意喚起を!」)をお読みください。
このように学生のブラックバイトは深刻な問題となっています。
東京都が「【動画で見る】若者必見!知らないと損する「労働法」|東京都労働相談情報センター」という動画を作成するほどです。
いやぁ、この動画に出てくる先輩くらい知識があれば言うことなしですよ!
さて、この記事ではいくつかの具体例に言及し、学生のみなさんへ注意を促したいと思います。
試用期間中のバイト代半額!?
私も呼びかけ人の1人となっているのですが、現在、ブラックバイト告発キャンペーンを実施中です。
様々な声が寄せられていますが、まずは試用期間中のバイト代半額事件!(事件名は勝手に私が付けています)
◆北関東在住の男子学生(大学1年生)
ラーメン屋で働いています。自分のほかにも学生が多数働いています。
アルバイトの募集では時給が17時から780円、夜間23時~1時は時給1000円でした。
が、実際は最初の1か月間は試用期間だからとバイト代は時給の半額で支給され、業務で使う長靴も自費で買わされました。
ひと月働いて5万円もらったのですが、本当なら10万はもらえてたはずです。大学の休みの間、休暇を取りたいといったら、「休んでいいけど、次の出勤からまた試用期間1か月扱いね」とあっさり言われました。
さすがに親に相談したらそれは違法だからすぐバイトやめろと言われ、そのときに初めて違法なんだとわかりました。
*特定されないように一部改変しています
半額ということは17時からの時給は390円、夜間でも500円ということになりますね。はい。どう見ても最低賃金法違反です。
ちなみに、最低賃金は都道府県別に定まっており、平成27年3月時点における最低賃金の中の最低額は677円となっています(鳥取、高知、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄)。他方、最高(?)の最低賃金は東京都の888円です。
自分の働いている場所の最低賃金は厚生労働省のHPで調べられます。
GPS機能つきのスマホなどであれば、位置情報から最低賃金を示してくれるページもありますので、便利ですよ。
損害賠償を請求される事例多発!
退職をさせないために損害賠償請求をするブラック企業の手口については、「ブラック企業の典型的手口~退職妨害にご注意!」の記事の中で言及しました。
これはアルバイトでも例外ではありません。
たとえば、この画像をご覧下さい。
これは退職を申し出たアルバイトの学生に対して、退職することを面白くなく思った使用者がたたきつけてきた損害賠償の請求書です。
通称「297万円請求事件」と呼ばれています(私が呼んでるだけです)。
まぁ、見るからに無茶苦茶なのですが、「事情変更の原則」とか、どこかで聞きかじったのだろうと思われる法律用語を使い、金額も297万円と高額で、何も分からない労働者だったら間違いなくビビってしまうだろうと思われる内容です。
ここでビビって退職をしなければ思うつぼですので、きっぱり辞めるのが大事な対処法となります。
他にも損害賠償を請求される例はあります。
次の画像をご覧ください。
弁護士から送られているので、これはそれなりに理由があるのかと思いきや、ここに書いてある「不法行為」とは、アルバイトが辞めることだそうで・・・。
いやはや、弁護士ももう少しがんばってほしいものですね。
労働者に対する損害賠償は、こうした退職妨害系の大きなものだけではありません。
身近なところで言うと、レジのお金が合わない場合の穴埋めです。
ブラックバイト告発キャンペーンでも次の声が寄せられました。
レジの違算金を弁償させられる
これは「ブラックバイトあるある」にも入るくらいよくある話です。
職場によっては、これを埋め合わせる基金を従業員たちに拠出させている例まであるほどです。
土屋トカチ監督の「ブラックバイトに負けない! ―クイズで学ぶしごとのルール」(DVD)でも出てきました(このDVDの予告編の動画を本記事の最後に載せました)。
言うまでもないのですが、レジのお金が本来あるべき金額に不足していても、労働者がこれを弁償する義務はありません。
逆に、間違ってレジのお金があるべき金額よりも多かったからといって、それを労働者がもらえるわけではありません(さすがにこういう例は耳にしたことがありません)。
いずれにしても、普通に仕事をしている過程で生じるミスについて、労働者が逐一弁償することは不要です。
ノルマ系ブラックバイト
さて、最後はよくあるノルマ系のブラックバイトです。
法的にはどうなのか、対処はどうするかについては、今野晴貴さんの「クリスマスケーキの強制買い取りは違法?」をご覧下さい。
ここでは一例を紹介しましょう。
ブラック企業被害対策弁護団の事務局長をしている戸舘弁護士のところに、次の相談があったそうです。
◆あるコンビニでバイトしてる大学生
恵方巻きの予約獲得数をアルバイト達で競争させられ、自分は最下位になってしまった。
最下位になったら節分当日、罰ゲームとして店頭で宣伝をすることになっていたので、店頭で4時間立って恵方巻きの販売をした。
でも、これは罰ゲームなので無給。
・・・・無茶苦茶すぎる。(-_-;)
労働組合に加入して解決!
この件は、この学生を労働組合(首都圏学生ユニオン)につないで、コンビニ側が全面的に非を認めて、賃金を支払い、さらに謝罪して終わったそうです。
労働組合との団体交渉では、このコンビニでは、うなぎ、クリスマスケーキ、恵方巻きなどの予約がはじまる前には、毎回従業員全員を集めて2時間にわたるミーティングを行っていたそうです。無給で。
労働組合は、これも過去に遡って賃金支給をさせたとのことです。
また、商品予約獲得競争とこれに伴う罰ゲームをしないことやいわゆる自爆営業もしないことを約束させたそうです。
こういった学生を対象にした労働組合が結成されたというニュースが最近もありましたね→ブラックバイト改善へ大学生が労組結成 都留文科大学
まだ数は少ないのですが、下記の2つが学生向けの代表的な労働組合ですので、困ったら相談するのがといいと思います。
知識を身につけることも大事!
最初の東京都の動画に出てくる先輩くらい、とまでは言いませんが、ある程度は労働に関する知識を持つことは必須です。
そういう知識を身につける意味も込めて、ブラックバイト告発キャンペーンでは、「ブラックバイトにつぶされないために」という企画もやりますので、興味のある方はご参加ください。
暇があまりないという方は、先ほどの東京都の動画を見るだけでも、少しは違うと思います。
とにかく、充実した学生生活を送るためにも、
ブラックバイトにご用心!
です!