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マニアでなくても楽しめる!サロン・デュ・ショコラに見る、日本のチョコレート市場

笹木理恵フードライター
国内外のトップショコラティエのチョコレートが集結(筆者撮影)

18回目を迎えた、日本最大のチョコレートの祭典

入口では、約200kgのホワイトチョコレートでつくられたシロクマがお出迎え。(筆者撮影)
入口では、約200kgのホワイトチョコレートでつくられたシロクマがお出迎え。(筆者撮影)

日本最大のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」が今年もやってきた。1月27日(月)~2月2日(日)の7日間にわたって開催される東京会場を筆頭に、札幌、名古屋、京都、福岡、仙台の6都市で開催される。国内外の有名なチョコレートが日本中を旅するこの祭典は、ここでしか買えない海外のブランドや限定商品も多く、チョコレートのトレンドを感じられるイベントともなっている。例年、長い行列や混雑ぶりが話題になっていたが、2018年からは入場チケットを有料化し、時間帯別の入場システムを採用。イベントに先駆けてネット販売も行っているが、注目のチョコレートは開場を待たずして売り切れる白熱ぶりだ。

日本初登場「トゥルビヨン バイ ヤンブリス」のポップなシュセットは、開場前から話題に(筆者撮影)
日本初登場「トゥルビヨン バイ ヤンブリス」のポップなシュセットは、開場前から話題に(筆者撮影)

今年のバレンタインは、6年ぶりに金曜日。昨年に引き続き、「ルビーチョコレート」を使った華やかな見た目の商品が市場を賑わせているほか、近年の「ビーン・トゥ・バー」チョコレートの盛り上がりや、健康志向によるハイカカオチョコレートのニーズ拡大などで、改めてチョコレートに注目が集まっている。そうした中、開催される「サロン・デュ・ショコラ」は、2020年で18回目。今回は「出会い」をテーマに、最大規模の東京会場では、国内外の112ブランドが出展。毎年、まず話題になるのは、「日本初上陸」、「サロン・デュ・ショコラ限定」といったキーワードである。「サロン・デュ・ショコラ」を訪れるチョコレートファンは、毎年、この時期にしか日本で販売されない海外のショコラトリーの商品や、会場でしか購入できないチョコレート菓子など、希少性の高い商品を求める。

今年でいえば、パリ8区の5ツ星ホテルが手掛ける「ル ブリストル パリ」や、「獺祭・ジョエル・ロブション」のシェフ・パティシエによる「タダシナカムラ パリ」、2018年にブティックをオープンした「トゥルビヨン バイ ヤンブリス」、オランダで活動するショコラティエのコラボ「フランクハースヌート&トムファンデフェーン」など。例年、人気の商品は会期終了を待たずして終売になる商品も少なくない。

マニアでなくても楽しめるイベントへ

ブルターニュの特産品・蕎麦の実を使ったミニタブレットのアソート(筆者撮影)
ブルターニュの特産品・蕎麦の実を使ったミニタブレットのアソート(筆者撮影)

会場を歩いていて感じるのは、チョコレートの多様性、そして日本のチョコレートの進化だ。「サロン・デュ・ショコラ」は、もともとパリの展示会をモデルに日本に持ち込んだだけあって、出展するブランドは例年、フランスが最も多い。フランスの、しかもボンボン・ショコラの限定アソートを購入する、というのが多くの来場客の目的だったのが、近年はボンボン・ショコラ以外のアイテムが増え、タブレット、クッキーやケイクなどの焼き菓子まで、バリエーションが広がっている。また、フランスでトレンドだという、蕎麦の実やヒマワリの実などの雑穀を使ったチョコレートも多く見られた。

サクサクのメレンゲとチョコのハーモニーが楽しめる「ジャン=ポール・エヴァン」の「パヴァロワ」(筆者撮影)
サクサクのメレンゲとチョコのハーモニーが楽しめる「ジャン=ポール・エヴァン」の「パヴァロワ」(筆者撮影)

また今回は、2018年頃から増え始めたイートインのメニューがさらにパワーアップ。ライブ感を重視した実演販売のイートインメニューや、チョコレートを使ったパンも充実しており、フランスのチョコレートのブランドに詳しくなくても、限定のデザートを味わい、会場を見て回るだけでも楽しい。また、サロン・デュ・ショコラは、国内外のシェフが多数来場し、サインをもらえたり、写真撮影に応じてくれたりする貴重な場でもある。ただチョコレートを買うだけでなく、昨今のトレンドである「体験型」イベントとしての側面が、ますます大きくなってきているようなのだ。そういう面では、少し前のマニアが中心だった頃と比べると、すそ野が広がり、幅広い客層が楽しめるイベントに進化しているともいえる。2018年からは公式のインスタグラムも公開しており、パリのサロン・デュ・ショコラの様子や、出店するブランドの紹介、プレス発表会の様子など、本番までの舞台裏を伝えていくような内容を発信している点も、客層を広げるきっかけになっているようだ。

独自の進化を遂げる、日本のチョコレート

今年初出店。滋賀の「ボンボンショコラ」(筆者撮影)
今年初出店。滋賀の「ボンボンショコラ」(筆者撮影)

また会場では、日本のチョコレートの盛り上がりも感じることができる。今回で言えば、112ブランドのうちフランスが42と最も多いものの、日本のブランドも30以上が出展しており、アイテム数も豊富だ。有名なパティスリーやショコラトリーだけでなく、地方の専門店も出店しており、これからのサロン・デュ・ショコラは、将来有望な日本のショコラティエを応援する役割も担っている。パリのサロン・デュ・ショコラでも、2016年より日本に特化した「エクスペリエンス ジャパン」のブースが設けられ、日本からショコラティエが多数出展。日本のチョコレートに対する世界の関心は高い。

デザインバリエーション豊富な「クラブハリエ」のボンボン・ショコラ(筆者撮影)
デザインバリエーション豊富な「クラブハリエ」のボンボン・ショコラ(筆者撮影)

また、日本のブースに着目してみると、華やかなパッケージ、遊び心のあるギフト提案にも目がいく。ボンボン・ショコラが日常に根付いたフランスとは異なり、日本ではバレンタインデーの慣習もあり(これも、もともとは日本の菓子メーカーが仕掛けたものだが)、チョコレートはギフトとしての役割が非常に大きなウエイトを占める。そのため、日本でチョコレートを売るためには、ギフトにふさわしい、高級感やきらめきのあるパッケージが求められてきた経緯がある。さらに昨今はSNSでの拡散が消費行動につながることから、写真映えするようなチョコレート菓子も増えている点にも、時代性を感じられる。個人的には、サロン・デュ・ショコラでお店を知ったお客が、のちに実店舗でボンボン・ショコラを自分用に数粒買うような文化が育つと、日本でのチョコレートの地位がもう少し日常に降りてくるのではと思う。

ショコラティエだけでなく、消費者も産地や素材に目を向ける時代に

カカオがチョコレートになるまでの展示や体験コーナーを出展している明治のブース(筆者撮影)
カカオがチョコレートになるまでの展示や体験コーナーを出展している明治のブース(筆者撮影)

昨年10月に開催されたパリのサロン・デュ・ショコラは、25周年という節目の年であった。2019年は「パティスリー」をテーマに掲げており、パティスリーのエリアが約3000平方メートルに拡大し、ショコラトリーのチョコレート以外の表現も目立ったという。菓子に携わる様々な人がチョコレートに関心をもつなかで、国内外で第一線をいくショコラティエは、産地に足を運び、カカオという原料を知り、産地での労働や環境問題に関心を寄せる人が増えている。日本のサロン・デュ・ショコラでは、そこまでの啓蒙的なブースはまだ見られないが、1粒のチョコレートを通じて問題提起をし、産地や原料へ思いをはせる時代が、もうそこまで迫っているようだ。

フードライター

飲食業界専門誌の編集を経て、2007年にフードライターとして独立。専門誌編集で培った経験を活かし、和・洋・中・スイーツ・パン・ラーメンなど業種業態を問わず、食のプロたちを取材し続けています。共著に「まんぷく横浜」(メディアファクトリー)。

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