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ベン・アフレックの自虐的ダンキン・ドーナツCM、最新版も超面白い!

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ダンキンの最新CMに出演したベン・アフレック(Dunkin'/YouTube)

 アメリカ最大のスポーツイベント、スーパーボウルは、コマーシャルも大きな見どころ。この日のために、思いきりお金をかけたクリエイティブなコマーシャルが製作されるとあって、近年では、映画スターが配偶者や母親なども連れて出演するケースも増えている。

 昨年、マサチューセッツ州出身のベン・アフレックが出演した、同州に本拠を構えるダンキン(旧ダンキン・ドーナツ)のCMも、大きな話題を呼んだ。そして彼は今年もまた、その“続編”ともいえるダンキンのCMで、スーパーボウルの視聴者を大喜びさせることになっている。彼の自虐ジョークがますます炸裂している上、今回は、幼馴染みのマット・デイモンや、ニューイングランド・ペイトリオットで長年プレイしたトム・ブレイディまで引き込み、豪華さがアップ。“1作目”の終わりにサプライズ出演したアフレックの妻ジェニファー・ロペスもまた出演し、良い味を出している。

 実は、今回のCMに先立ち、今月4日のグラミー賞授賞式番組では、もう1本、新しいCMが流れていた。今作はその続きで、つまり3作目。話は昨年のスーパーボウルで流れたCMからつながるものだ。

 その最初のCMで、アフレックはダンキンのドライブスルーで働いている。やってくる客は一般の客で、多くはアフレックに商品を手渡されてはびっくり。そんなところへ思いがけずロペスが運転する車が訪れ、「あなた、何をしているの?仕事に行くと言って出かけて、実はこういうことをやっていたの?」と言い、アフレックはバツの悪そうな表情になる。

 このCMのロペスには「彼女が見せた最高の演技」(そう言われるのは、主演級の映画女優である彼女にしたら決して嬉しくないだろうが)、アフレックには「とても幸せそうに見える」という反響が寄せられた。このスーパーボウルの前に、グラミー賞授賞式で退屈そうにしているアフレックの写真がネットに出回り、話題を集めていたせいも大きい。それに比べて、このCMの彼は生き生きして見えたのである。

 それを受けて作られたのが、今年のグラミー賞授賞式番組で放映された2作目のCMだ。1分間のCMの最初で、アフレックは、グラミー賞で冴えない顔をしている自分の写真がテレビで流れるのを見ている。彼は不満そうに、「退屈だって?違うよ。研究しているんだよ。俺にだってできるさ。そんな難しいはずはないだろう」とつぶやく(その間、彼はダンキンのアイスコーヒーを飲んでいる)。彼が「自分にもできる」と言っているのは、音楽。アフレックは早速電話をかけ、実際に誰かにも会って、音楽のキャリアをスタートさせようと、本気で行動を始める。そして最後に、大きなドーナツのペンダントを自分の首にかけながら、シリアスな口調で、「リズムもわからない、歌も歌えない、どんくさい中年の白人男だと思っているのか?俺はポップスターになんかなれないと?ボストンを甘く見るなよ」と宣言するのだ。その後、「続く」というテロップが出るのだが、それが今回のスーパーボウルで流れたCMというわけである。

 そうやって真剣にミュージシャンとしての道を歩むと決めたアフレックは、この最新版のはじめで、「やめたほうがいいよ」とアドバイスする友人に、「去年、彼女は俺の職場に来た。今回は俺に何ができるのかを彼女に見せないと」と、昨年のCMにつなげる。そして彼は、ダンキンのイメージカラーであるピンクとオレンジの衣装でデイモン、ブレイディを連れてロペスのレコーディングスタジオに現れ、グループ「The DunKings」として、ラップのパフォーマンスを始めるのだ。終わった後、ブレイディが「俺たちはアルバムに入れてもらえるの?」と聞くと、ロペスは困った表情でアフレックに「この話はもうしたわよね」と諭す。あっさりそう言われてしまったアフレックは「行くぞ!」と仲間を連れて出ていくが、ロペスはブレイディにだけ「トム、あなたはここにいていいわよ」と笑顔で語りかけて特別扱い。最後はアフレックとデイモンが去っていく後ろ姿で終わる。

 報道によれば、アフレックは今回のスーパーボウルのCMの出演料として1,000万ドル(今日の換算レートでおよそ15億円)をもらったとのこと。小遣い稼ぎとしても良いし、妻や親友との共演も楽しめ、何より、自分を笑える余裕のある人としてイメージアップをできたのは大きいだろう。来年のスーパーボウルでもまた続きが見られるのか、今から気になる。

 そのほかに、今年のスーパーボウルでは、クリストファー・ウォーケンがBMW、アーノルド・シュワルツェネッガーとダニー・デヴィートがステート・ファーム、スカーレット・ヨハンソンがM&M、クリス・プラットがスナック菓子プリングルス、アンソニー・ホプキンスがコーヒーのブランド、ストック・コールド・ブリューのコマーシャルに出演した。スーパーボウルの30秒スポット放映料は700万ドル(およそ10億円)。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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