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子どもにかかるお金を徹底的に安くする方法とは?

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(写真:アフロ)

少子化が進む中、子どもを持たない、あるいは2人目、3人人目を産まない理由のひとつに子育てにはお金がかかることが挙げられ、子育て世帯への公的な支援の拡充が検討されています。

今後の政策に期待しつつ、子どもにかかるお金を徹底的に安くする方法について考えてみました。

子どもにかかるお金は生活費と教育費

子どもにかかる費用は生活費と教育費です。

まずは生活費の節約から

生活費は、食べて…、着て…、健全に生きていくための費用で、食費、衣服費、家賃や住宅ローンなどの住居費が該当します。

入居資格を満たすなら公営住宅

子どもがいるから増えるのに意外と見過ごされていると思うのが住居費です。子どもが生まれれば、夫婦2人のときよりも広いスペースが必要になり、引っ越しや住宅購入を考える夫婦は多いものです。子育て世帯が入居できる公的な住宅の入居資格を満たすならぜひ応募したい。通常、年収制限があり、場所によっては倍率が高くなりますが、めげずに何度でも応募することです。

自民党の茂木幹事長が、「公営住宅を活用することで、新婚世帯や子どもの多い若者世帯の住宅費を圧倒的に削減できる」と発言したことが報道されました。もっと多くの公営住宅を子育て世帯が利用できるようにしてほしいし、その際には多子世帯に限らず1人でも子どもがいれば対象とし、また年収制限をもっと上げることを望みます。住居費の節約効果は大きく月当たり数万円になるでしょう。住居費が安くすめば、その分を他の子育て費用や貯蓄・投資に回すことができます

格安スーパー、格安スマホ、衣類は中古

住居費以外はどうでしょうか。私事で恐縮ですが、子どもが高校生で体育会の部活動をしていた時期の食費はかなりのものでした。シャワーやシャンプーのための水道代、視力が悪かったためメガネやコンタクトレンズの購入費用、小学生高学年から持たせた携帯電話料金など、生きていくためにかかる生活費は、子供の成長にともないどんどん膨らんでいきます。食品のまとめ買い、格安スーパーの利用、携帯電話は格安スマホなど、このあたりは、どこのお宅でも実行していることでしょう。

やり方次第でかなり安くできるのが、衣服費です。最近は新品でもそこそこ値段の安いものを買うことができますが、さらに一段安くするのは、自分の子どもよりも少し年上の子どもがいるお宅から、お下がりをもらうこと。フリマアプリなどの登場で個人間の中古品の売買も便利になりました。どんどん大きくなる子どもの体格に合わせて毎年新しい服を買っていたら、累計の衣服費はかなりの額になります。

こういったこまめな節約で、家族構成にもよりますが、月数千円から3万円程度の節約が可能になりそうです。

実は、子どもの生活費のデータはあまりありません。家賃や住宅ローンのうち○○円が子どもの居場所代とか、食費のうち△△円は子どもが食べた分などと分けて考えることは少なく、一家の生活費に含まれるからです。しかし、子どもの成長にともない生活費は確実に増えていきます。わかりにくい点では隠れ子育て費用とも言え、意識して節約することが必須です。

さらにのしかかってくるのが教育費です。「子育てにはお金がかかる」と言うときのお金は、教育費を指す場合が多いでしょう。金額がわかりにくい子どもの生活費とは対照的に、公的な調査データがあります。

教育費は進学先の選択で異なる

教育費は、進学した学校に支払う授業料などの学校教育費と、各家庭の判断で使う塾や習い事の費用、家庭内で使う机・本棚・パソコンなどといった学習のために必要な物品の購入費などがあります。

公的な調査では、これらを合わせて「子どもの学習費」と呼びます。3歳から高校卒業までに親が出した学習費の総額は全国平均で次の通りです。

もっとも安い公立幼稚園の3歳児が年間約13万円、月割にすると1万円強です。最も高い私立の小学1年生は年間約214万円、月割にすると約18万円です。

言わずと知れたことかもしれませんが、教育費を安くするには、公立、国立の学校に進学することに尽きるでしょう。

小・中学校までは義務教育ですから、地元の公立に通えば授業料は無料。給食費などは自己負担ですが、授業で使う楽器、習字セット、絵具類などの道具類も極力新品は買わずにお下がりなどを活用すれば支出を減らせます。中学や高校の制服も、その学校を卒業した兄・姉がいるお宅に譲ってもらえないか交渉します。学校指定の体操着、柔道着、剣道着やカバンなどは、PTAや父母会が開催するバザーなどで入手します。こうすることで年間1万~数万円を減らせるでしょう。

中学受験を安くするには

都市部では中学受験をする子どもの割合が高くなっています。その際、私立ではなく公立の中高一貫校なら、中学の授業料は無料で、特徴のある教育を受けられます。ただし、教育費のコストパフォーマンスに敏感な親にはすでによく知られた話で、倍率はかなり高くなります。地頭がよく、親に言われなくても、興味のあることは自分で調べたり勉強したりするお子さんが向いているようです。地元の公立中学とほぼ同じ学費ですみそうです。

一方、私立中学に入学して教育費を安くするには特待生になることです。知り合いの子どもは、あえて能力より偏差値が低めの学校に入学し、そこでトップグループに入ることで特待生として授業料を免除されていました。私立の中学や高校では、入試の成績や入学後の成績次第で入学金や授業料を免除することがあります。年間では数十万円の節約になります。

塾はオンラインで

塾に行かずに済むならそれにこしたことはありませんが、今どきなかなか難しいもの。塾の費用は、個別指導、授業形式、オンラインの順に安くなる傾向があります。パソコンやタブレットで受講するオンライン塾なら安くすむ可能性が高くなります。選択次第で、個別指導や授業形式の2分の1から10分の1でですむ可能性があります。習い事は必要最小限に絞り込みオンライン塾を選択するのがコスパを上げるポイント。学習のための物品は中古品などで安くすませれば、数千円から数万円の差が出るでしょう。

高校は普通高校ではなく、高専(高等専門学校)に進学する選択肢もあります。高専は5年間の一貫教育で技術者を養成します。国立が多く、国立なら入学金と授業料の合計で5年間で126万円程度。しかも、卒業後の就職率が高く、もっと勉強したければ、専攻科への進学や大学への編入もできます。

節約の難易度が高い大学等の費用

高校卒業後の高等教育も、安くすむ点では国・公立の優位は変わりません。とはいえ、高等教育になると国・公立であっても、高校までよりも高くなります。

以下は、大学等の高等教育機関の初年度納付金のデータです。

先に紹介した高校までのデータには、学校の授業料などに加えて、家庭で出した塾代なども含まれていましたが、大学等のデータはあくまで合格して入学した学校に払った金額です。

国・公立でも年間の授業料は約54万円。1万円程度ですんでいた公立高校の4.5倍。入学金も30万~40万円かかります。

また注意点は、私立の費用はあくまで平均額だということです。国立・公立は学部による差はほとんどありませんが、私立は実際には学校および学部でかなりの差があり、理系学部は高い傾向があります。

学校に払う費用に加えて、家庭からも通学定期代や、下宿生なら仕送りをすることになり、もっと費用がかかることになります。

安くすませるのがもっとも難しいのが大学等の教育費で、入学した以上は、その学校が決めた授業料などを払わないわけにはいきません。

繰り返しになりますが、なるべく公立や国立に進学する、給付の奨学金を探して対象になるなら申し込むことです。

給付の奨学金には親の年収制限

給付の奨学金の代表は、日本学生支援機構の奨学金です。ただし対象は、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯。授業料減免とセットになっているので、利用できるなら教育費の負担はほぼゼロに近くなりますが、奨学金のために親の収入を減らすわけにはいかないでしょう。しかし、もし失業や病気などで収入が減ってしまったときは、申請することです。

日本では給付の奨学金は少なく、しかも対象者が限られているので、親が用意した資金ではどうしても足りない場合は、貸与の奨学金(代表的なものは日本学生支援機構の奨学金)を借りることになります。その場合は、卒業後に地方自治体の返還支援制度を利用すれば返還を支援(肩代わり)してもらえます。地方創生の世の一環として実施されている制度で、対象となる地域の対象となる企業に就職することが必要です。

大事なのは卒業後

教育費が安くすんでも、その後、子どもがちゃんと自立しなければ意味がありません。子どもにかかるお金が安くすみ、かつ、大人として自分の力で生きていける力を身に付け、生活するに足る収入を得られる仕事に就くことが親としては好ましいわけです。選択した進路が、どのような仕事につながるかは、常に意識しておきたいものです。

と、ここまでは子どもの気持ちや意思は考慮せず、単純に安くすむ方法を紹介してきました。

習い事や塾、進学先の選択などにより、子どもにかかるお金は大きく違ってきます。ただし、親だけがやきもきして、いろいろな方法を調べたり、実行に移したいと思ったりしても、うまくいくものではありません。子どもにかかるお金は、子ども次第の面が大きく、子ども抜きには判断できません。子どもにとって、その選択は納得がいくかどうかも、特に自分の意思がハッキリしてくる中学生以上では重要です。

親子だからこそ、進学に関わることを冷静に話すのは意外と難しいものですが、日頃から本音で話せる関係を作っておくことが、コスパが高く、かつ適切な選択につながるのではないでしょうか。

紹介したデータは2点とも「子どもにかかるお金の超基本」河出書房新社より。出典は文部科学省。組版・装丁=松岡未来(ヤング壮)

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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