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老後の年金は増やせる!4つの方法とは?

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(写真:イメージマート)

65歳からの年金額を増やすには?

公的年金の受取額を増やす方法として最近話題になっているのが、受取り開始を遅らせることです。本来は65歳からの受取りですが、これを1か月遅らせるごとに65歳から受け取るよりも0.7%増え、最長の75歳まで遅らせると84%増やせます。65歳から年金をもらわなくても生活が成り立つ人は、この方法を使えるでしょう。しかし、65歳からもらいたい人は、どうすればいいのでしょうか。

65歳からの本来の年金額を増やす方法があります。方法は主に4つです。

国民年金、厚生年金をそれぞれ増やす

公的年金は、国民年金と厚生年金の2階建てです。国民年金は20歳以上60歳までの人は全員入ります。会社員や公務員は厚生年金に入り、それにより国民年金にも自動的に入る仕組みになっています。本来の年金額を増やすには、国民年金、厚生年金の両方が少しでも増えるよう取り組みます。

◎その1 国民年金を満額に近づける

国民年金は20歳から60歳までの40年、月数に換算して480月入って保険料を払えば満額の77万7800円(年額、2022年4月からの金額)をもらえます。480月に満たない人は、足りない月数分を払うことで満額に近づけることです。

例えば大卒後23歳で会社員になり60歳で定年退職する予定の人なら…。会社員として厚生年金に37年加入し、自動的に国民年金にも37年入ります。国民年金の満額には3年足りません。正社員ではなくても、継続雇用などで会社員を続けて厚生年金に加入すれば、国民年金に加入したのと同じ効果があり、3年以上働けば満額になります。ただし、それ以上厚生年金に加入し続けても、国民年金の部分は増えません。もちろん厚生年金は、給与と加入期間に応じて増えますのでご安心を(その3、その4を参照)。

個人事業主など国民年金の加入者なら、60歳以降は65歳まで任意加入ができるので、保険料を納めて満額を目指します。

ちなみに、国民年金の保険料を1か月分払うと、年金額は約1640円増えます。3年分なら約5万9000円です。

国民年金保険料を猶予・免除してもらった期間がある、学生納付特例を受けた期間があるなら、追納できる分を追納しましょう。追納は過去10年までさかのぼれます。

会社員の厚生年金の保険料には国民年金の分も含まれているので別途支払う必要はありません。所得税・住民税の計算の際には厚生年金保険料は社会保険料控除され、その分、所得税・住民税が安くなります。

任意加入や追納で自分で払った国民年金保険料も、社会保険料控除の対象になるので、会社員なら年末調整、個人事業主なら確定申告で控除すれば、やはり所得税・住民税が安くなります。

◎その2 厚生年金に入っていない人は、入れる働き方を選ぶ

国民年金は満額があるので、満額以上に増やすことはできません。厚生年金に入れば、国民年金に厚生年金が上乗せされて、その分、年金を増やせます。2022年10月から、パートやアルバイトの人も、厚生年金に入りやすくなります。

これまでは、①一週間の労働時間が20時間以上、②給与が月額8万8000円以上、③1年以上働く見込みで、④従業員数501人以上の事業所に勤務する人で⑤学生以外は厚生年金に加入します。これらの条件のうちの③と④の2つが改正されます。

2022年10月からは、③2か月を超えて働く見込みで、④従業員101人以上の事業所に勤務する人は加入対象になります。扶養の範囲内に抑えるために働く時間や給与を調整しているなら、条件を満たして加入してはいかがでしょうか。社会保険料を天引きされますが、将来の年金額を増やすことができます。

ちなみに年収120万円で10年間働くと厚生年金が6万円(年額)増えます。

◎その3 厚生年金に入って給与を増やす

厚生年金は、働いていた期間の給与が高く、加入していた期間が長いほど、老後の受け取り額が増えます。

まずは、給与を増やすことを試みましょう。昇給できるように頑張るのが正当な方法ではありますが、残業などで4,5,6月の給与を増やすのも年金増につながります。なぜなら、4,5,6月の平均給与をもとに厚生年金の保険料を計算し、これが将来の年金額に反映されるからです。「6月に残業してはいけないは本当? 実は将来の公的年金が増えるメリットも」をご参照ください。

◎その4 なるべく長く、できれば70歳まで厚生年金に入る

次に、厚生年金の加入期間を長くする方法を検討します。国民年金は最長で40年(480月)という期間の縛りがありますが、厚生年金には40年の縛りはありません。ただし、年齢の上限があり、入れるのは70歳までです。

日本の会社は今も60歳定年が大多数で、その後は65歳まで継続雇用になります。そして、「その2」の方法で書いた通り、一定時間以上働き、一定額以上の給与をもらう会社員は厚生年金に加入します。これは60歳を過ぎても同様で70歳までは厚生年金に加入できます。

60歳で定年した後も仕事を続けて65歳までは厚生年金に入りましょう。

例えば年収300万円で5年間働くと、厚生年金が7万9200円(年額)増えます。

年金をもらっている人も増やせる

ここまで紹介してきたのは、65歳からの本来の年金額を増やす方法です。65歳から年金をもらい始めた後でも、年金は増やすことができます。

ご存じの通り、70歳まで働ける環境作りが進められています。実際、60代後半になっても働く人の数は年々増えています。

仕事を続けられるなら、65歳で年金を受け取り始めても、70歳までは働いて厚生年金に加入しましょう。働いて給与をもらいながら受け取る年金を在職老齢年金といい、給与と厚生年金の合計が一定額を超えると年金を減額される仕組みになっています。上限は月47万円。つまり合計で47万円以下なら減額されず、年金と給与を丸々受け取ることができます。しかも、厚生年金に加入することで、その後の年金額を増やせます。

受け取っている厚生年金の額にもよりますが、仮に約20万円の年金をもらっていて、そのうち厚生年金が14万円なら、33万円までなら給与をもらっても大丈夫ということです(給与は、ボーナスがあるなら合計して12で割って月額を計算する)。

65歳以降に加入した厚生年金の分が年金額に反映されるのは、以前は仕事を辞めた後か70歳時点でした。

2022年からは毎年10月に年金額が改訂されるようになりました。つまり、公的年金をもらいながら働いて厚生年金に加入し、毎年その分の年金が増えていくのです。70歳までこれが可能になりました。

ちなみに、60歳から70歳までの10年間、年収300万円で働いたとすると、厚生年金が15万9000円(年額)増えます。支払った厚生年金保険料は社会保険料控除となり、加入期間中は税金が安くなります。

若い人も、もう若くない人も、公的年金は増やせます。

増やせる金額を見て、頑張って働いてもそれくらいかと思った方もいるかもしれません。しかし、公的年金は生きている限りもらえます。月当たり1~2万円の違いでも、他に収入がない老後には貴重だし、積み重なればけっこうな金額になります。できることを、ぜひ実行してください。

(増加する厚生年金の金額はすべて厚生労働省のパンフレットより)

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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