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NISAとiDeCoどちらか選ぶなら? 資産所得を増やすための判断ポイント

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(提供:イメージマート)

投資で資産所得を増やす?

これまで投資をしたことがない人や、あまり投資に興味がなかった人も、そろそろ始めた方がいいのかな?と思っているかもしれませんね。

なにしろ、首相が「資産所得倍増プラン」を打ち出したのです。収入には、働いで稼ぐ「労働所得」と、株式などの金融資産から受け取る「資産所得」があります。株式や投資信託の配当金や分配金などは、自分では何もしなくても株式などを持っているだけで得られます。これを「資産所得」といいます。預金の利息も資産所得ですが、日本では長らく1%未満という超低金利が続いてきたので、高額の預金を持っていたとしてもあまり期待できません。そのため、日本では数年前から「貯蓄から投資へ」ということが言われてきました。これを促すために始まったのが「NISA」です。

投資の利益が非課税になるNISA

「資産所得」と呼ぶ通り、株式などの配当金や分配金、値上がりによる利益は収入と見なされ、税金(所得税と住民税)がかかります。「NISA」では、これが非課税になります。減税することで、国が動かしたい方向にお金の流れを誘導するのは典型的な政策の手段。とはいえ、株式や投資信託を買うのなら、せっかく国が用意してくれた制度を使わないのはもったいない。

「NISA」は、さらに「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つがあり、どちらか一方を選んで使います。

・「一般NISA」は非課税になる期間が最長5年。1年当たり投資できる金額は120万円まで。株式も投資信託も買うことができ、買い方は一括買いと積立の両方が可能です。

・「つみたてNISA」は非課税になる期間が最長20年。1年当たり投資できる金額は40万円まで。名前の通り積立で投資信託を買います。

いずれも非課税になる期間中ならいつでも売ることができます。売ったらもう投資は終わりです。売らずに非課税期間が過ぎたら、非課税期間が終わった後に受け取る配当金や分配金、その後の値上がり益には課税されます。「NISA」は日本に住む成人なら誰でも使うことができます。

投資の利益が非課税になり、節税もできるiDeCo

一方、「NISA」と同じくらい最近よく聞くのが「iDeCo」です。「iDeCo」を使って投資をした場合も、利益にかかる税金(所得税と住民税)が非課税になります。この点は共通ですが、「iDeCo」は「NISA」に比べて仕組みがちょっと複雑です。

利益が非課税なだけではなく、投資したお金(iDeCoは自分で入る年金の一種なので掛金と呼びます)を所得から控除できるので、その分、掛金を払っている期間は給与などの所得にかかる税金(所得税と住民税)が安くなります。

その代わり解約して受け取るときは、退職金や公的年金と同じ扱いで税金がかかります。毎月、掛金を払って、その掛金で自分で選んだ投資信託を積立てる仕組みです。公的年金に上乗せして準備する年金なので、受取りは60歳以降です。

毎月の投資額(掛金)は、立場によって異なります。最低5000円以上で、会社員は勤務先の企業年金の導入状況により1万2000円または2万円または2万3000円。公務員は1万2000円。専業主婦(夫)は2万3000円。個人事業主などは6万7000円です。

投資する(投資信託を積立てる)以外にも、定期預金を積立てることもできます。ただし、定期預金の金利は低いので、利益にかかる税金が非課税になるメリットを活かしているとは言えないでしょう。

「iDeCo」は公的年金に加入する60歳未満の人(厚生年金に加入している人や国民年金に任意加入している人は65歳まで)が使うことができます(勤務先に企業型確定拠出年金が導入されていてマッチング拠出をしている会社員は不可)。

なぜ制度が始まったかと言うと、公的年金だけでは老後資金が不足すると思う人が自分で年金を準備できるようにです。

余裕があるなら併用してメリットを享受

このように、「NISA」と「iDeCo」は性格が異なるので、現役で働いていて(60歳未満)、家計に余裕があるなら併用すれば、非課税の特典や節税効果を最大限に享受できます。とはいえ、投資に回せる金額は人により違いますし、限度があります。併用する場合は、それぞれの枠いっぱいではなく、無理のない金額で利用することを考えましょう。

NISAとiDeCoどちらか選ぶなら?

どちらか一方を選ぶ場合は、投資の目的、年齢や立場により判断します。

初めての投資ならNISA?

目安としては、初めての投資を試してみたいなら「NISA」。特に株式投資をしたい場合は、証券会社で「一般NISA」の口座を開く必要があります。投資信託を積立て少しずつ資産を増やしていきたいなら「つみたてNISA」です。投資して増やしたお金を現役時代に使いたい場合も「NISA」です。60歳を過ぎていて「iDeCo」を利用できない人も「NISA」です。

老後資金準備ならiDeCo?

「iDeCo」が向いているのは、毎月コツコツと積立てて老後資金を準備したい人。中でも、勤務先の退職金や企業年金が少ない会社員。退職金や企業年金がない契約社員、パートやアルバイト。老後の公的年金が少ない個人事業主です。

「iDeCo」は、投資で得た利益にかかる税金は非課税ですし、掛金の所得控除により現役時代は節税ができます。ただし、受取り時は課税される点に注意が必要です。

その際、「iDeCo」からの受取りは退職金や公的年金と合算して税金を計算するので、退職金や公的年金が少ない人の方が税金も安くなります。特に「iDeCo」を退職金のように一時金受取りした場合、非課税枠に収まって利益を含めてマルマル受け取れるケースもあります。

例えば、20年間「iDeCo」に加入した場合の、一時金受取りの非課税枠は800万円です。仮に毎月1万5000円を20年積立てると元本は360万円。2倍に増えたとしても720万円なので非課税枠に収まり税金はかかりません。

資産所得倍増はできる?

ちなみに、資産所得のひとつである日本の株式の配当金の利回りは平均2%程度。高いものは4~5%。一方、定期預金の金利は都市銀行の場合、0.002%程度(2022年7月現在)。大きく違います。そのかわり、株価は不安定で、上がるときもあれば下がるときもあります。

とはいえ、毎月積立で日本株式の投資信託(インデックス型)を買った場合、過去のデータではありますが20年で2倍程度に増えています。

働いて労働所得を得ることと並行して資産所得も得て自分のお金を増やすことは、不可能なことではありません。そして、せっかく増やした資産所得は、非課税の口座を使って有利に受け取りたいですね。

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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