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成人年齢引き下げでNISAやiDeCoはどうなる? “既成人”の資産運用に影響は?

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(写真:アフロ)

2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられた。親の同意なしでクレジットカードやローンの契約ができる。では、NISAやiDeCoはどうなのだろう? すでに、こういった資産運用の非課税口座を使っている“既成人”に何か影響はあるのだろうか?

新成人がNISAを使えるのは2023年から

まずはNISAについて。投資信託を積立てる「つみたてNISA」と、積立も一括買いも可能で投資信託に加えて株式やETFも買える「一般NISA」がある。特徴は投資の利益にかかる税金が非課税になること。いずれのNISAも、新成人が利用できるようになるのは、約1年遅れの2023年1月からだ。

なぜなら、NISA口座を作れる条件は、口座を開設する年の1月1日時点で成人であることだから。税金は1月1日から12月31日までの1年間を単位として計算する。そのためNISA口座における1年も1月1日から12月31日まで。成人年齢の引き下げにより2004年4月2日以降に生まれた人は、18歳の誕生日が成人となる日だが、これとはズレが生じる。

例えば、2022年に18歳になる人は、2023年1月以降にNISA口座を作れる。2023年に18歳になる人は2024年1月以降にNISA口座を作れる。

つまり、新成人が、NISA口座に参入してくるには、まだ少し時間があるということだ。

iDeCoはこれまで通り20歳から

iDeCoはどうだろうか。iDeCoは正式には個人型の確定拠出年金で、確定拠出年金は、会社員が企業年金の一種として加入する企業型と、自分の意思で加入する個人型、通称iDeCoに分かれる。公的年金の不足を補うための制度で、やはり投資の利益にかかる税金が非課税になる。

企業型の確定拠出年金はすでに加入者あり

企業型の方は、実は、成人年齢の引き下げは関係なく、導入企業なら高卒者は18歳から加入している。企業型の確定拠出年金の対象者は、厚生年金の加入者であり、年齢の下限はない(20歳未満の場合は国民年金の加入期間としてはカウントされない)。進学率が上がって、高校卒業後に大学や専門学校等の高等教育機関に進む人が約8割。就職する人は残り約2割で、なおかつ入社時に企業型の確定拠出年金が導入されている会社に就職したケースになるから、絶対数は少ないが、20歳未満の企業型加入者は約4万3000人いる(2021年3月末時点、運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料」より)。

ただし、その運用の内容を見てみると、預金と保険が約50%をしめ、知識不足や運用への戸惑いが推察される。それでも残りの約50%は投資信託で運用している。20歳前から老後の準備を始めているのだ。

一方、個人型=iDeCoの加入条件は、国民年金の被保険者であることで、こちらは成人年齢の引き下げに関わらず従来通り20歳以上だ。新成人も20歳になって国民年金に加入するまで待つしかない。

つまり、新成人でNISAやiDeCoを利用する人の増加が予想されるのは、2023年以降になる。

18歳人口は毎年100万人前後いるから、約10年後にはNISAやiDeCoの対象年齢となる人は1000万人程度増える。このうちどれくらいの人がNISAやiDeCoを使って資産運用に取り組むのだろうか。つみたてNISAは、他の年代に比べて20代の利用者が増加している。iDeCoも20代の加入者が増えているから、この流れでいけば新成人も一定数は利用するだろう。2022年4月から始まった高校での資産運用の授業は後押しになるだろうか?

新成人も預金から資産形成への流れの中に

日本では数年前から国を挙げて、家計の金融資産を「預金から資産形成へ」動かす仕組みを作り、これを促している。企業に資金を調達することと、企業の収益が家計資産の増加にもつながるようにすることが目的だ。NISAやiDeCoを利用する人は増えているから、一定の効果は上がっているようだ。成人年齢の引き下げで、NISAやiDeCoの口座を通して、株式や投資信託を買う人がさらに増えると、すでに投資をしている側にはどんな影響があるのだろう。

株価を動かす要因はいろいろあるが、買いたい人が増えれば株価は上がりやすい。直接であれ、投資信託を経由してであれ、株式を買う人が増えることは市場の活性化につながる。そして株式投資のよいところは、トレードオフではなくウィンウィンであることだ。株価が上がれば、その株式を持っている人は全員が得をする。逆に下がれば全員が損をするデメリットもあるから、投資は怖いということになる。ただし、長期的に積立で投資をすれば、投資を開始した時期よりも投資を終える時期の価格が低くても損失ではなく利益を出せる可能性があり、NISAやiDeCoで投資信託を積立てた場合は、これにより損失のリスクはかなり低減できる。

新成人の投資口座への参入と商品選択の影響は、当初はさざ波のように小さいかもしれないが、だんだんと大きくなるに違いない。新成人の動向を見守りつつ、“既”成人も、人生100年時代を生き延びるべく資産運用に取り組みたい。

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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